しかもまだ成長途中の「10代」だったとみられています。
しかし驚くべきは、その保存状態です。
完全な頭骨だけでなく、パキケファロサウルス類で初めて見つかった「手」の骨、消化を助ける胃石、腱が残ったままの尾まで揃っていたのです。
他の同時代の恐竜化石と比べても保存度は抜群。
砂岩に包まれた柔らかい堆積物が、化石を衝撃から守ったことで、三次元的な歪みもほとんどありませんでした。
頭突きが武器として完成する年代を特定
今回の発見が恐竜学にもたらした最大のインパクトは、「頭突きドーム」の進化と成長段階の解明です。
これまでパキケファロサウルス類の頭骨は、成長によってどう変化するのか、その謎が長年議論されてきました。
なぜなら、幼体や若い個体の完全な化石がほぼ見つかっておらず、頭骨の違いが「別の種」なのか「成長段階の差」なのか、はっきりしなかったからです。
こちらはパキケファロサウルスの復元イメージ画像。
ザヴァケファレ・リンポチェの標本はこの疑問に正面から応えました。
チームは四肢の骨の「成長線」を調べ、死亡時の年齢を推定。
同時に、CTスキャンで頭骨の内部構造や縫合線を解析しました。
結果として、標本はまだ「10代」だったにも関わらず、すでに頭のドームは完全な大人サイズに達していたことが明らかになりました。
これは「思春期の早い段階で、頭突き用ドームが完成していた」ことを示します。
このドームは、捕食者への防御や体温調節には不向きで、主に仲間への誇示やオス同士の競争――いわば「見せびらかし」と「恋のバトル」のための“武器”だった可能性が高いと結論づけられました。
さらに、今回の標本はパキケファロサウルス類としては最古で、化石記録をこれまでより約1500万年も遡らせる発見です。
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参考文献
Stunningly Complete Dome-Headed Dinosaur Emerges From The Sands of Mongolia
https://www.sciencealert.com/stunningly-complete-dome-headed-dinosaur-emerges-from-the-sands-of-mongolia