笛が出土したのは、村への出入りを管理していたと考えられるチェックポイント的な小屋の内部でした。

これは偶然ではありませんでした。

古代エジプトの「警官」は何を守っていたのか?

アマルナのストーン・ビレッジや、近くのワークマンズ・ビレッジには、王家の墓建設に関わる労働者が暮らしていました。

これらの村では、建設現場や重要な区画への出入りを厳しく管理する必要がありました。

笛が見つかった建物は、まさに人や物の出入りをチェックするための「関所」だったと考えられています。

実際、当時のアマルナでは「メジャイ」と呼ばれる半遊牧民出身のエリート警備隊が、都市や墓の警備にあたっていた記録が残っています。

彼らは現代で言うところの警察官のような役割を果たし、出入りの管理や秩序維持のためにさまざまな道具を使っていました。

今回の骨製笛は、そうした警備担当者が注意を促したり、異常を知らせたりするために使用していたと考えられます。

さらに証拠として、アマルナの当時の警備役の墓の壁画には、警備役が村の入口で見張りをしていたり、不法侵入者を捕らえている場面が描かれています。

こうした背景からも、今回の笛は警備の現場で活躍した「古代の警官ホイッスル」だった可能性が高いのです。

骨製の笛という道具自体は、ヨーロッパの石器時代など世界各地で見つかっていますが、古代エジプトにおいては極めて珍しい存在です。

今回の発見は、これまでファラオや王族の墓・モニュメントに偏っていた古代エジプト研究の視点を、「市井の人々の暮らし」に広げるものでもあります。

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参考文献

3,300-year-old ancient Egyptian whistle was likely used by police officer tasked with guarding the ‘sacred location’ of the royal tomb
https://www.livescience.com/archaeology/ancient-egyptians/3-300-year-old-ancient-egyptian-whistle-was-likely-used-by-police-officer-tasked-with-guarding-the-sacred-location-of-the-royal-tomb