また、泣き声に「非線形現象(NLP)」が多く含まれているほど、大人の顔面温度の上昇も大きくなることが示されました。

つまり、人間は「赤ちゃんの苦しさ」を音の特徴として本能的にキャッチし、体が無意識にスタンバイ状態になるのです。

泣き声の「不協和音」に秘められた進化のサバイバル戦略

なぜ、赤ちゃんの泣き声にここまで私たちが強く反応するのでしょうか?

その答えは、私たち人類の長い進化の歴史のなかで、赤ちゃんが「自分の命を守るために」身につけたサバイバル戦略にあります。

言葉が話せない赤ちゃんは、自分の苦しさや危険を伝える唯一の手段として「泣き声」を利用してきました。

とくに強い痛みや危機にさらされたときには、声帯が激しく揺れ、音程もリズムもめちゃくちゃな、まるで「楽器が壊れたような」混沌とした音になります。

このような泣き声は、親や周囲の大人の脳と体に「今すぐ助けなきゃ!」という強い警報を発する効果があるのです。

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Credit: canva

今回の研究で明らかになったのは、人間はこうした「音響的特徴」にきわめて敏感であり、赤ちゃんが本当に苦しんでいるかどうかを“音の乱れ”として察知し、瞬時に情動・生理反応を起こすという点です。

また、従来「赤ちゃんの泣き声で夜中に目覚めるのは女性の方が敏感」とされていましたが、最近の研究では男性も女性も同じくらい赤ちゃんの泣き声に反応していることが分かっています。

ただし、起きてから実際に世話をする頻度や役割分担には社会的な背景(育児休暇の違いや授乳の有無など)が影響していると考えられています。

つまり、赤ちゃんの泣き声が大人の体温を上昇させる現象は、進化的に組み込まれた「見逃せないサイン」だったのです。

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参考文献

Babies’ cries can make humans physically hotter, research finds
https://www.theguardian.com/science/2025/sep/10/babies-cries-can-make-humans-physically-hotter-research-finds