第二に、Vibrio菌は普段は海に普通にいる細菌であり、「常在菌」としてあまり疑われていませんでした。

サンゴや貝、魚などでも一般的に見られており、普段は有機物分解や栄養循環を担う「海の生態系に必要な存在」です。

しかし、気温や水温の上昇、海の富栄養化、ヒトデ自体のストレスといった「環境の変化」が引き金となり、この細菌が急激に増殖することで、「大量死をもたらす病原体」に豹変していたのです。

この研究により、10年以上続くヒトデ消耗病の正体をようやく突き止めることができました。

今後は、原因菌の拡散状況や感染経路の把握、ヒトデ壊死病に強い個体の育成や再導入、沿岸生態系の復元や海洋環境の管理 など、科学的根拠に基づいた対策や回復プロジェクトを本格的に始動させる必要があります。

ヒトデの大量死は海の表面下で進行する「静かな危機」でしたが、今回の発見によって、私たちが再び海の森や豊かな生態系を取り戻すための新しい希望が生まれています。

現在、シアトル水族館などではニチリンヒトデの繁殖や再導入計画も始まっており、回復への第一歩が踏み出されています。

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参考文献

A starfish apocalypse: The bacterium behind billions of sea star deaths
https://newatlas.com/biology/starfish-sea-star-bacteria-death-ecosystem/

Starfish-killing bacteria revealed as cause of biggest undersea disease outbreak
https://www.nhm.ac.uk/discover/news/2025/august/starfish-killing-bacteria-revealed-cause-biggest-undersea-disease-outbreak.html