将来的に周期をさらに高速化できれば、通信のタイミングをより精密にコントロールしたり、情報量を大幅に増やしたりすることにもつながるでしょう。

さらに複数の異なる周期をもつ時間結晶を組み合わせることで、複雑で独特な「時空間パターン」が生まれます。

このパターンは人の指紋のように一つ一つが異なるため、情報セキュリティ分野で「暗号の鍵」として活用できる可能性も示唆されています。

研究チームは、特に時間結晶の周期を組み合わせて生じる独自のパターンを、本人確認の認証システムなどに応用することを提案しています。

つまり、時間結晶が情報セキュリティや通信技術において革新的な役割を果たす可能性があるのです。

また、今回の研究成果は純粋な科学的好奇心という観点からも非常に興味深いものです。

研究チームは、液晶のような「柔らかい物質(ソフトマター)」にはまだ発見されていない時間結晶現象が数多く眠っている可能性を指摘しています。

この研究がきっかけとなり、液晶以外のソフトマターの中にも新たな「時間結晶」が次々と発見されるかもしれません。

つまり、この成果は単なる技術的な発見ではなく、新しい科学の分野が開拓される可能性を秘めているのです。

私たちはこれまで、空間的な秩序(結晶構造)を目で見て利用してきましたが、今回の研究は人類が「時間に刻まれた秩序」を直接観察し、それを実際に役立てる新しい段階に入ったことを示しています。

絶え間なく変化し続ける不思議な縞模様は単なる珍しい現象ではなく、「空間と時間にまたがる新しい秩序」を私たちが理解し始め、その扉を開けつつあることの象徴とも言えるでしょう。

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元論文

Space-time crystals from particle-like topological solitons
https://doi.org/10.1038/s41563-025-02344-1