
我々が生きるこの世界は、実は誰かが作ったコンピュータ・シミュレーションかもしれない――。まるで映画『マトリックス』のような話だが、あるAIの専門家が、このシミュレーション仮説を「ほぼ確信している」と発言し、大きな注目を集めている。
AI技術は驚異的なスピードで進化を続け、ChatGPTの登場や不気味なほどリアルなAI動画が日々話題となっている。多くの人々が「AIに仕事を奪われるのでは」と不安を抱く中、議論はさらにその先へと進んでいるようだ。
もし、この世界そのものが壮大なシミュレーションだとしたら?我々の日々の悩みや喜びは、すべてプログラムされた結果に過ぎないのだろうか。
専門家が「シミュレーション仮説」を信じる理由
この衝撃的な見解を示したのは、コンピュータ科学者のローマン・ヤンポルスキー博士である。彼はあるポッドキャスト番組で、AIが人間の仕事をどう変えるかを語った後、さらに踏み込んで、この世界がシミュレーションである可能性に言及した。

シミュレーション仮説とは、我々の宇宙やその中に存在するすべてが、はるかに高度な技術を持つ文明によって作られたコンピュータ・シミュレーションである、という考え方だ。この理論を広めた哲学者ニック・ボストロムは、3つの可能性を提示した。
1.人類レベルの文明が、シミュレーションを実行できるほど高度な段階(ポストヒューマン)に到達する確率は、ほぼゼロである。
2.ポストヒューマン文明が、我々のような祖先のシミュレーションを実行することに興味を持つ確率は、ほぼゼロである。
3.我々のような経験を持つ存在のほとんどが、シミュレーションの中に生きている確率は、ほぼ1に近い。
もし3番目のシナリオが真実ならば、我々が「現実」だと思っているこの世界よりも、無数のシミュレーション世界が存在することになる。統計的に考えれば、我々がその無数にあるシミュレーションの一つの中にいる可能性の方が、唯一の「現実」にいる可能性よりも圧倒的に高くなる。
ヤンポルスキー博士は、まさにこの論理を根拠に、自身がシミュレーション仮説の信奉者であると明かした。「AIは人間のようなエージェントを作り出すレベルに達し、仮想現実は我々の現実と見分けがつかないレベルに近づいている」と彼は語る。