宇宙の最期は、冷たく、暗く、そして静か

 では、その「終わり」はどのような姿をしているのだろうか。

 宇宙に存在する全ての星が燃え尽き、全てのブラックホールがホーキング放射によって蒸発しきった後、そこには絶対的な無が訪れる。物質が存在しなければ、出来事も起こらない。そして、出来事がなければ、私たちが知る「時間」という概念そのものが意味をなさなくなる。

 宇宙の最期は、爆発的な破壊ではなく、全てが静かに消え去り、冷たく暗い“無”だけが永遠に広がる、というものになるのかもしれない。

ホーキング博士の理論が導き出した「時間そのものが消滅する日」と、宇宙の“思ったより早い”終わり方の画像3
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI))

人類は「終わり」を目撃できない

 心配する必要はない。この宇宙規模の終焉が訪れるずっと前に、私たちの地球、そして人類は姿を消している。

 ホーキング博士自身も、人類が地球の資源を使い果たし、自らの手でこの惑星を「火の玉」に変えてしまう可能性を警告していた。それは、数百年という、宇宙の寿命に比べれば瞬きにも満たない時間のうちに起こりうることだ。

 また、別の可能性として、宇宙の膨張を加速させている謎の力「ダークエネルギー」が、いつかその力を失うという説もある。もしそうなれば、宇宙は永遠に広がるのではなく、自らの重力で収縮に転じ、一点に潰れてしまう「ビッグクランチ」を迎えるかもしれない。

 いずれにせよ、人類が宇宙の終わりを目撃することはないだろう。私たちの惑星が誕生してから約45億年、ホモ・サピエンスが存在してきたのは、わずか30万年。宇宙の壮大な物語の中で、私たちはほんの一瞬の登場人物に過ぎないのだ。

 しかし、そのわずかな時間の中で、太陽系を超えて新たなフロンティアを目指すだけの時間は、まだ残されているのかもしれない。イーロン・マスクらが描く宇宙進出の夢は、人類という種が、母なる惑星の運命を超えて存続するための、唯一の希望なのかもしれない。

参考:The Pulse、ほか

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