オーストリアの戦後で最悪の銃乱射事件(犠牲者10人と容疑者1人、計11人が死去)を受け、ストッカー政権は「国の悲劇だ」と述べ、銃規制法の強化に乗り出すことになったわけだ。
一部のメディアでは、オーストリアは欧州でも銃所有がかなり自由で、銃社会だと報じていたが、銃の購入と銃携帯には厳格な武器法が施行されている。ただ、バルカン半島のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の影響などもあって、かなりの武器がオーストリア国内に不法に流れ込んでいる。
なお、政府の銃規制法の改正案について、野党第1党の極右政党「自由党」は4日、プレスリリースを通じ、「同改正案は国民の自由と市民権への不相応な干渉に当たる。また、改正法案は単なる場当たり的な立法だ」と指摘し、反対を表明している。それ以外の政党は同改正法案を支持している。
オーストリア心理学者協会(BOP)はプレスリリースで、銃規制強化計画を歓迎する旨を表明した。特に、カテゴリーCの銃器にも臨床心理学的評価を義務付ける提案と、5年ごとの心理的フォローアップ検査の実施、年齢制限の引き上げと定期的な見直し等々も歓迎している。
ちなみに、心理的適性検査の場合、遡及適用も可能となる。今年6月以降、カテゴリーBの武器の新規申請はすべて、適性検査を実施する必要がある。カテゴリーCについては、遡及適用は2年間まで適用される。
カーナー内相は記者会見で、グラーツの学校で発生した銃乱射事件を想起し、「オーストリアの歴史における悲劇的な節目であった。社会と政治家にとって、現状維持では済まされないことは明らかだった」と述べている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年9月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。