それからインドの大数学者ブラフマグプタ(598〜665年頃)は、未知数に色の名前を振って、その最初の音節を数式に用いています。
例えば、kâlaka(黒) からkâ、yavat tava(黄色)からya、nilaka(青)からniなどです。
つまり、未知数を何らかの記号で表す習慣は古代からあったわけですが、それではこれが「x」になったのはいつ頃だったのでしょう?
最初に「未知数=X」と使った人物とは?
現在の有力な仮説によると、最初に「未知数=x」となったきっかけはイスラムの数学にあるという。
この説では、未知数に使われたアラビア語の単語が「何か(something)」 を意味するal-shayunであり、それが最初の 「sh」 音の記号に短縮されたと言われています。
そしてスペインの学者がアラビア語の数学を自国に輸入するために翻訳していた際、「sh」の音を表す文字がなかったため、代わりに「k」の音を選び、これをギリシア文字の「χ(カイ)」で表しました。
このχが後にラテン語が作られたときの「x」になり、「未知数=x」となったというのです。
しかし数学史に詳しい専門家は、この仮説には裏づけとなる文書がなく、あくまで推測の域を出ないと話します。
また未知数としてのxは中世の数学で散発的には使用されていたようですが、これまでのところ一貫した使用記録はありません。
それゆえ、xはこの時点で誕生したかもしれませんが、数学上のルールとしてはいまだ定まっていなかったわけです。

ところが、現代のような「未知数=x」の使われ方が定着したきっかけは明瞭に分かっています。
それはフランスの哲学者で数学者でもあったルネ・デカルト(1596〜1650)によるものです。
デカルトは1637年の主著『方法序説』において、不特定の定数についてはアルファベットの最初の小文字(a、b、c)を、変数については最後の小文字(x、y、z)を使う表記を確立しました。