⑦「NAPA研究所」は、教育と地域社会への奉仕の促進に尽力する民間の慈善団体。全ての人間の生命の尊厳と結婚の擁護を信条とする同財団の価値観は、カトリック教会のそれと一致する。
以上から、超保守派のカトリック教会関係者が米国の退廃した民主主義に代わって「神権独裁制」を実現するため、様々な組織、NGO、シンクタウン、法律専門機関などをネットワークしていることが理解できる。宗教的な教義や指導者の解釈が法や政策の基準となり、世俗の法や制度は二次的なものと見なす。換言すれば、「政権分離」ではなく、「政教一致」の国体を目指している。現在では、ハメネイ師が指導するイスラム共和国のイランの聖職者支配体制だ。
米国で「神権独裁制」への待望論が社会の一部だが広がっていることは少々驚かされる。「アメリカを再び偉大に」(MAGA)を標榜し、第2期政権を始めたトランプ大統領は宗教を重視、政権内に「信仰局」(キリスト教福音派の女性伝道師ポーラ・ホワイト氏がトップ)を新設するなど、「信教の自由」に格別の関心を有している。超保守派のカトリック教会指導者はトランプ政権と強い繋がりを有している。トランプ氏の再登場は超保守派聖職者の「神権独裁」を鼓舞していることは間違いないだろう。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年9月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。