これらは従来、大卒者が大量に就いてきた職種である。すでにAI登場以前から事務職の人余りは深刻であり、今後はさらに雇用の受け皿としての価値を失っていく。

にもかかわらず「自分は大卒だから」と現場仕事を下に見て、デスクワークだけに選択肢を狭めてしまうことこそが、日本の労働市場における最大の非効率を生み出している。

実際、生成AIが流行る前から事務職はとっくにオワコン化していた。人手不足の今、専門性のない事務職だけは強烈な人余りとなっている。電気工事士や物流などは人手不足が深刻だが、人あまりの事務職人材がそこへ行くことはない。

確かに「大卒の方が賃金が高い」というデータは依然として存在する。だがこれは平均値であり、専攻や職種によって分散が拡大している。一部において、最近では「現場仕事」の方が高給取りにすらなっているケースも出てきた。

大卒はもはや多数派であり、シグナルとしての意味を失った。中身の伴わない学び、人口減少、AIによる事務職の淘汰が重なり、「大卒」の肩書きは暴落の一途をたどるだろう。

そしてこれから必要なのは大卒の肩書きなどではなく、マーケット感覚だ。かつては「大学にいけなかった人がなる仕事」と言われがちな現場仕事が大卒者の給与を追い抜いているのだから、時代の変化に柔軟に対応しその時々で世の中に必要とされる仕事へスイッチするべきだろう。「時代は変わった」という事実を受け入れ、頭の切り替えが必要なときが来ている。

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