もっとも、いきなり最適なKPIを設計するのは難しい。そこでまずは、どの業種にも共通する「経営の健康指標」ともいえる5指標を整えることをお勧めします。
売上(月別・前年比) 粗利率(売上に対する粗利の割合) 営業利益(月次) 現預金残高(月末時点) 運転資金月数(手元資金 ÷ 月平均支出)
これらを押さえるだけでも、経営の現状を俯瞰し、意思決定の精度は格段に上がります。
「自社に効く数字」を見つける
さらに一歩進めるには、自社の事業特性に合ったKPIを探します。
小売業なら「来客数」や「在庫回転率」、BtoBなら「案件化率」や「平均受注単価」、サブスクなら「解約率」や「契約単価」など。
探し方のステップはシンプルです。
利益が出ていた時期を振り返り、成功要因を言語化する。 その要因を測定可能な数字に変換する。 毎月10分で確認できる形に整える。
この循環を回せば、数字は現場の行動を変える「ナビゲーション」になります。
見える化を仕組みに落とし込む
数字を行動に変える仕組みを根付かせるには、運用の工夫も欠かせません。
データ収集は半自動化する(会計ソフトやGoogleフォームを活用) 月次で変化を議論する時間を設ける(単なる共有で終わらせない) 数字と仮説をセットで見る(「問い合わせ増=LP改善の成果か?」など)
こうした習慣が「数字を見るだけ」で終わる状態を断ち切ります。
事例:拠点別に利益を生み出したサービス業
あるサービス業の企業(年商約2億円)では、複数拠点を展開していましたが、拠点ごとの収支の管理ができておらず、資金繰り表も作成していませんでした。まずは基本指標である拠点ごとの営業利益や資金繰りを可視化し、その後、生産性(従業員一人あたりの売上)や客単価などを拠点ごとに見える化することで、収益性の低い拠点とその課題が明確になり、改善策を講じることができ、赤字拠点の黒字化につながりました。