1万2000年前、超古代文明は「彗星衝突」で滅んだのか? 考古学最大の謎“ヤンガードリアス期”の真相とはの画像1
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI))

 約1万2800年前、地球は突如として氷河期のような極寒の時代に逆戻りした。最終氷期が終わり温暖化に向かっていたはずの気候が、なぜか急激に冷え込んだのだ。「ヤンガードリアス期」と呼ばれるこの謎の期間は、マンモスなどの大型哺乳類を絶滅させ、人類の歴史にも深刻な影響を与えたと考えられている。

 そして今、この大災害の原因をめぐり、「巨大な彗星の破片群が地球に衝突した」という、壮大かつ論争的な仮説が、考古学と宇宙科学の世界を揺るがしている。これはSFのような空想話なのか、それとも、我々の歴史観を根底から覆す真実なのか。

対立する2つの仮説と、海底から見つかった「決定的証拠」

 ヤンガードリアス期の原因をめぐっては、長年2つの主要な仮説が対立してきた。

** 融解水パルス仮説: ** 従来からの有力説。氷河期の終わりに北米大陸を覆っていた巨大な氷床が溶け、その冷たい水が大量に海へ流れ込んだことで、熱を運ぶ海洋循環が停止し、地球が寒冷化したとする説。

** ヤンガードリアス彗星衝突仮説 (YDIH): ** 作家グラハム・ハンコック氏などが支持し、近年注目を集めている説。巨大な彗星が分裂し、その無数の破片が地球に衝突・空中爆発したことで、大規模な火災と気候変動が引き起こされたとする説。

 懐疑的な科学者たちは、これまで発見された衝突の痕跡とされる物質は「地上の人間活動による汚染」の可能性もあると指摘し、彗星衝突仮説に疑問を呈してきた。

 しかし、2025年8月、この論争に一石を投じる新たな論文が学術誌『PLOS One』に発表された。サウスカロライナ大学の考古学者クリストファー・R・ムーア氏率いる研究チームが、バフィン湾の海底から採取した堆積物を分析したところ、ヤンガードリアス期の地層から、彗星由来の塵、衝突時に生成される微小な球体、そして地球上には極めて稀なプラチナといった、「衝突の動かぬ証拠」を発見したのだ。

 人間の影響が及ばない深海の底から証拠が見つかったことで、彗星衝突仮説は、かつてないほどの信憑性を帯び始めた。