その正体は「ジュンガル門」 – アジアを繋いだ古代のハイウェイ
しかし、残念ながらこの「ドア」は中つ国(『ロード・オブ・ザ・リング』の世界)や古代の霊魂とは何の関係もなかった。その正体は、「ジュンガル門(Dzungarian Gate)」または「アルタイ・ギャップ」として知られる、中央アジアと中国を結ぶ歴史的に重要な山岳通路の一部だったのである。
このジュンガル門は、中国の新疆ウイグル自治区とカザフスタンを繋ぐ壮大な渓谷であり、その長さは遠くアフガニスタンまで、約4800kmにも及ぶ。かつては、馬に乗った遊牧民や商人たちが東西の文化や物資を運ぶために行き交った、いわば「古代のハイウェイ」だったのだ。古代ギリシャの伝説では、世界の最北端に住むとされた神話上の人々「ヒュペルボレオイ人」の地とも関連付けられている。
では、なぜ「ドア」の形に? 地球が創り出した壮大なアート
歴史的な通路の一部であることは分かった。しかし、なぜこれほどまでに完璧な「ドア」の形をしているのだろうか?
この疑問に対し、Reddit上では地質学者を名乗るユーザーたちが明快な答えを提示している。
「こうした岩の形状は、実はそれほど珍しいものではありません」 「これは自然に形成される『アーチ(天然橋)』ができ始める初期段階です」
つまり、この神秘的な「ドア」は、古代文明や巨人が作ったものではなく、何百万年、何千万年という地質学的な時間をかけて、風や水の浸食によって岩が削られてできた、純粋な自然の造形物なのだ。

ある地質学者はこう付け加える。「人々は、地質学的なプロセスがどれほど長い時間をかけて起こるのかを想像するのが難しいのです。自然は時に、私たちの想像を遥かに超えるクレイジーなものを創り出しますよ」
SNSで瞬く間に世界中に広まった謎の巨大構造物。その正体は、異世界への扉ではなく、地球という惑星が悠久の時をかけて彫り上げた、壮大な芸術作品だったのである。
参考:LADbible、ほか
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