●この記事のポイント ・政府が、医療保険や介護保険などの社会保険料の負担額に、金融所得を反映させることを検討 ・比較的高額な金融資産を持つ高齢世代から広く社会保険料を徴収していく方針か ・厚労省「年齢にかかわらず負担能力に応じて負担していただくことを目指す」
政府が、医療保険や介護保険などの社会保険料の負担額に、金融所得を反映させることを検討している。金融所得に応じて負担する社会保険料が変わることになる。現在、社会保険料は給与や年金などの額に応じて決まっており、金融所得については確定申告をしなければ社会保険料に反映されないため、以前から不公平が生じていると指摘されている。
一世帯あたりの金融資産は現役世代より高齢世代のほうが高く、日本の金融資産は高齢世代の保有比率が高いため、「比較的高額な金融資産を持つ高齢世代から広く社会保険料を徴収していくのが狙いではないか」(霞が関官僚)との見方もある。もっとも、導入には法改正が必要などハードルも高い。具体的にはどのような制度が検討されているのか、また、導入される場合、時期はいつ頃になるのか。厚生労働省への取材を交えて追ってみたい。
●目次
厚労省「負担能力がある方には負担をしていただくという観点」
現在検討されている制度は、具体的にどのような内容なのか。また、現行制度からどのような点が変更されるのか。厚生労働省は次のように説明する。
「金融所得というのは、株式や債権譲渡、配当金などですが、確定申告を行うかどうかは本人が選択できます。つまり確定申告をするか、しないのかによって、医療保険や介護保険の負担額が変わってくるので、これでは不公平だという問題があります。その不公平を是正できないかというのが、今検討している背景です。不公平の是正というのに加えて、社会保障制度自体を持続させていくためにも、年齢にかかわらず負担能力に応じて負担していただくことを目指すことが必要だと考えております」
制度が導入された場合に、国民負担が増加する可能性はあるのか。
「その部分に関しましては、具体的な予算の検討はまだ行っていないので、お答えができません。高齢者層の医療・介護の保険料の負担増が目的なのかという点につきましては、負担増が目的ではなく、繰り返しになりますが、あくまでも負担能力がある方には負担をしていただくという観点になります」(厚労省)
同制度の導入に向けては課題もあるという。
「どのように一人ひとりの金融所得を把握していくのかという問題があります。考えられる方法の一つとしては、法定調書を活用するという方法も想定されますが、その場合においても、証券口座とマイナンバーの紐付けが欠かせませんので、大きな課題だと考えています」(厚労省)
法定調査とは、金融機関が国税庁に提出する、口座保有者の配当・利子の支払いなどに関する資料。現在の法律では金融機関が自治体に提出することは想定されておらず、法改正が必要となる。また、保険料負担者が複数の金融機関を利用している場合、各金融機関における支払い額を合算する「名寄せ」が必要になる。厚労省が「証券口座とマイナンバーの紐付けが必要」というのは、このためだ。