●この記事のポイント ・一時は入手困難といわれるほどの高い人気でブームとなった「ヤクルト1000」が踊り場を迎えている ・ヤクルト、売上高営業利益率10%超、売上高・営業利益のうち海外事業が約半分を占める ・アメリカを含む米州での本数増、価格改定効果で増収増益となり、国内飲料・食品セグメントの減収減益をカバー
2021年に全国発売された乳酸菌飲料「ヤクルト1000」シリーズ。店頭専用商品の「Y1000」と宅配専用商品の「Yakult1000」から成り、一時は入手困難といわれるほどの高い人気でブームとなったが、昨年頃からはメディアなどで“ブーム終焉”というマイナスの表現を使われることも目立つようになった。販売数量ベースでは、確かに踊り場を迎えている状態といえるかもしれない。店頭専用商品の2024年度の販売本数は105万本で、計画の130万本には達しなかったものの、23年度の102万本からは微増。
一方、宅配品の24年度の販売本数は196万本で、23年度の216万本から約1割減となっている。製造・販売元のヤクルトの業績は悪くはない。25年3月期の売上高は前期比0.7%減の4996億円で横ばい、営業利益は同12%減の553億円だが、売上高営業利益率は10%超を維持している。
注目すべきは海外売上高比率の高さだ。売上高、営業利益のうち海外事業が約半分を占めており、グローバル企業としての顔も持つ。ブームが落ち着いたとされるヤクルト1000の事業について、同社はどのように拡大させていく計画なのか。また、今年で創業から90周年を迎える老舗企業である同社は、どのような成長戦略を描いているのか。同社に取材した。
●目次
宅配・直販チャネルの垣根を超えた全社的な施策を実施
日本人であれば誰もが知る「ヤクルト」シリーズを製造・販売するヤクルトは、現在では清涼飲料や健康食品、麺類なども手掛ける大手食品メーカーであり、化粧品やペット商品なども商品ラインナップに揃えている。そんな同社をめぐり昨年頃からいわれているのが、「ヤクルト1000」の失速だ。とはいえ、年間で販売本数約300万本という数字からはヒット商品という表現がふさわしい。24年度は販売計画を下回った要因、今後の販売拡大に向けた戦略について、同社は次のようにいう。
「前年度の販売計画を下回った要因としては、新規顧客獲得が計画どおりに進まなかったからです。宅配の『Yakult1000』に関しては、2025年1月に『Yakult1000 糖質オフ』を全国発売しましたが、ヤクルトレディによる新商品紹介活動が既存顧客中心となったことから、結果として『Yakult1000』からのスイッチに留まり、Yakult1000類全体での増客が図れませんでした。25年度については、離反防止を目的とした顧客の定着化に加え、新規顧客獲得に向けた活動にも注力し、全体的な顧客数の増加を図ります。
続いて、店頭の『Y1000』に関しては、前年度は、継続飲用を目的として6本パックの配荷を強化したことで客単価アップを図れた一方、単品の購入率が減少し、販売計画に対して本数は微減となりました。25年度については、4月から『Y1000Y 糖質オフ』を導入し、日経POS新商品ランキングにおいても飲料カテゴリーで1位となっています。引き続き、相手先販促への協賛などを行うことで配荷拡大を進めていきます。
ヤクルト1000シリーズ全体としては、25年度がヤクルト創業90周年にあたる節目の年であるため、宅配・直販チャネルの垣根を超えた全社的な施策を実施し、ヤクルト1000シリーズ全体での売上拡大に取り組みます。ヤクルト1000シリーズの販売目標としては、330万本(Yakult1000類210万本、Y1000類120万本)です」