ダイエット飲料やゼロカロリー食品に欠かせない人工甘味料。

砂糖の代わりに広く利用され、「健康的な選択肢」として認識されてきました。

しかしブラジルのサン・パウロ大学(USP)による最新研究で、人工甘味料を日常的に摂取する人は、記憶や思考力といった認知機能の低下がより速く進行する可能性があることが明らかになりました。

健康のために選んでいたはずの人工甘味料が、実は脳の老化を加速させているかもしれないのです。

研究の詳細は2025年9月3日付で科学雑誌『Neurology』に掲載されています。

目次

  • 人工甘味料は脳にダメージを与えるのか?
  • 明らかになった驚きの結果

人工甘味料は脳にダメージを与えるのか?

現在、世界の認知症患者数は2050年までに3倍に膨れ上がると予測されており、研究者たちは脳の老化に影響する生活習慣因子の解明に力を注いでいます。

従来から、砂糖の過剰摂取は心血管疾患や糖尿病だけでなく、脳の健康にも悪影響を与えることが知られてきました。

そのため多くの人々が、砂糖の代替として低カロリーまたは無カロリーの人工甘味料を選んでいます。

アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムカリウム、エリスリトール、キシリトールなどは、ダイエット飲料やヨーグルト、プロテインバー、ガム、さらには卓上の甘味料として日常的に利用されています。

見た目も手軽で「砂糖より安全」というイメージが広がり、世界中で急速に普及しました。

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Credit: canva

しかし一方で、人工甘味料には糖代謝異常、心血管リスク、さらにはうつ症状との関連が指摘されてきました。

今回の研究は、それらに加えて「脳の健康」という観点から長期的な影響を調べた点で大きな意義があります。

研究を行ったのは、ブラジルの6都市で2008年から継続している「ブラジル成人健康長期縦断研究(ELSA-Brasil)」です。

35歳以上の公務員を対象とした大規模調査で、今回の解析では12,772人の中高年男女が追跡されました。