では、脳の他の部位が撃ち抜かれた場合はどうでしょうか。

脳全体の80%を占める大脳は、運動・知覚・精神活動に関与していますが、ここを撃ち抜かれたとしても即死することはないようです。

実際、大脳の一部に損傷を負っても生存した人がこれまでにも確認されています。

もちろん、損傷した部分の機能は失われますが、やがて他の部位が失われた機能を肩代わりすることもあるようです。

例えば大脳は右半球と左半球に分かれており、正面からの銃撃によって片方の半球だけが損傷した場合、もう片方の半球がその機能を補う可能性があります。

エンジンを2つ積む双発の飛行機が、片方のエンジンが故障しても、なんとか飛ぶことができるように、片方の大脳に損傷を負った人も何とか立ち直ることがあるのです。

特に前頭葉(大脳の前部分)は、ヘッドショットの際に損傷を受けやすい部位ですが、ここだけの損傷であれば生存率は比較的高くなります。

弾丸の速度が小さければ失血による死亡率が低下する

頭部を撃ち抜かれた人の死因の多くは失血死
頭部を撃ち抜かれた人の死因の多くは失血死 / Credit:Canva

生命維持に関与する「脳幹」が弾丸によって損傷し、人が即死する確率はそこまで高くありません。

つまり多くの場合、頭を撃ち抜かれた人が死ぬ原因は他にあります。

それは失血死です。

そして失われる血液の量は、弾丸のサイズと速度に直接影響を受けます。

ここで物理学の観点から弾丸の威力を考えてみましょう。

「速度 v」で運動する「質量 m」の弾丸の「運動エネルギー K」は、次の式で表せます。

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この式からすると、弾丸の質量が2倍になるとエネルギーも2倍になると分かります。

一方、弾丸の速度は、エネルギーに対する二次関数となっており、速度が増えるほどエネルギーが非常に大きくなっていきます。

つまりヘッドショットにおける死亡率がより影響を受けるのは、弾丸の速度であり、これはどんな銃器が使用されるかで決まります。