また、このシミュレーションでは、原子の数を増やした場合の状況も検証されました。

量子電池を作る際には、たった一つの原子だけでなく、多数の原子を同時に使って集団的に充電することで、より多くのエネルギーを蓄えることが期待されています。

今回の研究では原子の数を2個、3個、4個と増やして、その挙動を詳しく調べました。

その結果、原子同士が近くにいると互いに押し合ったり引き合ったりする「相互作用」が働き、興味深い現象が起こることが判明しました。

この相互作用の強さを調整すると、充電後に最終的に溜まるエネルギーが波のように増えたり減ったりするということです。

特に興味深かったのは、原子の数が奇数の場合と偶数の場合でエネルギーが振動するパターンに違いがあったことです。

これは原子の数によって最適な充電条件が変わることを意味しますが、実際にはレーザーの条件や相互作用の強さを調整すれば、奇数であっても偶数であっても満充電の安定状態に導けることが分かりました。

この発見は重要で、これまでの量子電池の研究が、単一の原子や粒子の相互作用が無い理想的な状況を主に想定していたのに対して、実際の多粒子系、つまり複数の原子が互いに相互作用をする現実的な条件下でも安定した充電が可能であることを示したからです。

つまり、今回の研究によって、現実的な環境に近い状況でもしっかりとエネルギーを蓄えられる新しい量子電池の可能性が初めて明確に示されたのです。

限界と次の一手:温度・接続・拡張

限界と次の一手:温度・接続・拡張
限界と次の一手:温度・接続・拡張 / Credit:Canva

今回の研究で特に重要だったのは、量子電池が抱える「エネルギーを安定して保つ」という難しい課題に対して、まったく新しい解決方法が提案されたことです。

そもそも量子電池の大きな問題は、エネルギーを満タンまで充電したとしても、その後でエネルギーが安定せず、勝手に減ったり揺れたりしてしまうことでした。