この点で注目されるのが、日本の伝統文化として受け継がれてきた「礼法」です。
礼法では「立つ・座る・歩く」といった日常の動作を反動をつけずにゆっくりと行うことが重視されます。
一見すると非効率に思える動作ですが、実際には足腰の力を保つための工夫でもありました。
しかし、こうした動作が筋力や体力に与える効果を科学的に検証した研究は、これまで行われてきませんでした。
1日5分で足腰が強化
そこで研究チームは、礼法に基づいた動作が実際に脚の筋力を強化するのかどうか、調査を実施。
対象となったのは礼法の経験がない20歳以上65歳未満の健康な成人34名で、彼らを礼法トレーニング群とコントロール群に分けました。
礼法トレーニング群では、1日わずか5分程度の運動を週4日以上、3か月間続けました。
その内容は、椅子からの立ち座り動作を10回、そしてしゃがんで立ち上がる動作を10回行うものです。
さらに3週目以降は回数を12回に増やしました。
どちらの動作も、礼法に基づき「上体を大きく前に倒さず、一定の速度でゆっくり行う」という点が特徴です。

一方、コントロール群は特別な運動をせず、普段通りの生活を送りました。
そして3か月後、膝伸展筋力を測定した結果、礼法トレーニング群では平均25.9%もの筋力向上が確認されました。
これに対してコントロール群はわずか2.5%の増加にとどまり、明確な差が示されたのです。
この成果は、礼法を取り入れたトレーニングが「短時間」「低負担」でありながら「効果的」な方法であることを科学的に裏付けました。
特に1日5分という短い時間で取り組める点は、多忙な現代人や運動が苦手な人にとって大きな利点です。