■「日本でツアーやって!」と話題
出身・活動拠点共にアメリカのバンドだが、「Xポストの本文は全て日本語」というアンバランスさはX上で徐々に話題を呼び、ついに今年8月には投稿したポストに3万件近くもの「いいね」が付けられるほどの事態に。
もちろん、ポストに寄せられた声の大半は「トイレで暴れてないで、日本でライブしてくれ〜!」「こういう楽しそうなバンドの曲が、一番聴きたくなる」「久しぶりに、音楽を聴いてワクワクした」「日本でツアーやってほしい!」といった具合に、日本人ユーザーからの投稿であった。なお、フォロワーの9割が日本人だという。
日本を拠点に活動しているワケでもないバンドが、なぜここまで「日本語での投稿」にこだわるのか、今回はバンドのボーカルにして中心人物・Cody Okonskiに詳しい話を聞いてみることに。
すると、同バンドの「日本愛」が改めて明らかになったのだ。
■ある1人の「日本人ファン」がきっかけで…
バンドのXアカウントの詳細について、Codyは「僕たちのアカウントを一目見ただけでは、日本のファンアカウントだと思うかもしれませんが、実際は僕が運営しているアカウントです。僕の夢は、日本で大きなライブをやることなので、日本のファンに向けてXで、日本語で宣伝することにしました」と、説明する。
なお、バンド内で「簡単な挨拶以上」の日本語を話せるのはCodyだけなので、「もし日本でツアーが決まったら、もちろんミリントンのみんなにも日本語を勉強してもらいます」とも語っていた。
Codyが日本語を勉強するきっかけとなったのは2018年ごろ、まだ今よりも知名度が低かったミリントンに対し、ある日本人のファンが「日本語だけ」を使って、SNSでバンドを絶賛してくれたことだという。
Codyは当時の心境について「本当に嬉しかったです。それに、僕は子供の頃から日本製のゲームが大好きだったので、日本語を学ぶことにしました」と、笑顔で振り返っている。
当初は教科書だけで日本語を勉強していたが、インターネットを通じて趣味の合う人々と仲良くなり、次第に堅苦しい勉強法でなく、カジュアルな会話で、自然な日本語を覚えていってたのだ。
■悲劇を乗り越えたからこその「明るさ」
ミリントン誕生の歴史は、約10年ほど前に遡る。
2016年ごろ、ロサンゼルスでポップパンクバンド・Blink-182のインターンとして働いていたCodyは、そのスタジオ環境に大きな刺激を受けたという。その後ニューヨークに戻り、「自分でもバンドを結成したい」と、強く思うようになったのだ。
Codyは「僕はずっとスカパンクが好きで、親友のJonがトロンボーンを演奏していたこともあり、2018年ごろにミリントンを結成しました。スカパンクをベースにしながら、エモの要素も取り入れた楽しいバンドです」「最初はフルタイムのメンバーが揃っていなかったので、僕とJonだけでアルバムを録音しました。そのときは純粋に楽しむこと、そして僕自身が録音方法を学ぶことが目的でした。続いて新型コロナウイルスが流行する直前に2枚目のEP『Beatdown Generation』(2020年)を制作し、少しずつファンやメンバーも増えていきました」と、当時の様子を振り返る。
バンドとして順調なキャリアを歩み出したミリントンだが、そんな彼らを悲劇が襲う。
ロックダウンを経験し、活動再開も間も無くか…という時期にJonが亡くなってしまい、バンドは暗い時期を迎えることに。そんな中でリリースされたEP『Welcome Home』(2023年)は、外出できないフラストレーションや、大切な人を失った悲しみをテーマにした、とても感情的な作品となっている。

言葉にできない深い悲しみと直面した彼らだが、決してその歩みを止めない。少しずつ、少しずつ悲しみから立ち直り、現在はCody Okonski(Vo.Ba)、Alex Maloy(Gt.Vo)、Nick Cavin(Dr)、Chris Paul(Tb)、Pat Foxton(Sax)、Nathaniel McKeever(Tp)の6人で活動中。

今年7月にリリースしたEP『Better Safe and Sorry』には、より明るく、夏らしい雰囲気の楽曲が収録されている。
感情的な楽曲を聴きたいなら『Welcome Home』、ハッピーで軽快なサウンドを求めるなら『Better Safe and Sorry』がオススメとのこと。なお、エモコアに通じる「泣き」のメロディーが好きな記者個人としては、『Beatdown Generation』がオススメである。

Codyは「どの作品でも、キャッチーなメロディーと楽しいホーンパートを大切にしています。大事なのは、音楽を作るときに自分たちが楽しんでいることだと思います。たとえ感情的な曲であっても、楽しんで演奏していれば必ずその気持ちは伝わり、聴く人にも届くと信じています」と、楽曲に込めた想いを語ってくれた。