合法か、それとも犯罪か? 散骨と身元特定の壁
一体誰が、何のためにこれほど大量の遺灰を砂漠に遺棄したのか。捜査の鍵を握るのは、ネバダ州の法律と、火葬された遺灰の特性だ。
ネバダ州の法律では、個人が公有地に遺灰を撒くこと(散骨)は禁止されていない。しかし、葬儀社などが商業目的で大量に散骨を行う場合は、許可や環境規制の遵守が求められる。今回の発見が、個人の散骨なのか、あるいは業者による不法投棄なのかが焦点となる。
さらに問題を複雑にしているのが、身元特定の困難さだ。遺体は火葬の過程で1400~1800度もの高温にさらされるため、DNAはほぼ完全に破壊されてしまう。法医学の専門家は、骨片の微細構造や化学成分(カルシウムやリン酸塩のレベル)を分析することで、それが人間のものだと特定することはできる。しかし、誰の遺灰なのかを特定するのは、付随する記録や遺品がない限り、ほぼ不可能に近いのだ。

浮上した「いわくつき葬儀社」との関連
この不可解な事件の背景として、ある葬儀社の存在が浮上している。実は、今回の発見のわずか数週間前、ラスベガス市内の「マクダーモット葬儀社」が、遺体を適切に火葬・埋葬せず長期間放置していたとして、営業停止処分を受けていたのだ。
州の調査委員会の報告書によると、この葬儀社では、亡くなってから11ヶ月近くも火葬されていない女性の遺体が見つかったほか、複数の遺体が保管されていた保冷庫からは血液や体液が漏れ出しているという、あまりに劣悪な状況が確認されていた。
タイミングがあまりにも近いことから、当局は、この葬儀社が関係している可能性も視野に入れて捜査を進めているものとみられる。適切な処理が追いつかなくなった遺体を、人知れず砂漠に遺棄したのだろうか。
現場に残された結束バンドや壊れた骨壺が、事件の真相を解き明かす重要な手がかりとなるかもしれない。ラスベガスのきらびやかな光の届かない砂漠で起きたこの不気味な事件は、多くの謎を残したまま、捜査の進展が待たれている。
参考:Daily Mail Online、ほか
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