しかし、この公正世界仮説だけが被害者叩きの要因ではありません。
サディズムの人も被害者を非難する傾向があります。

サディズムというと、すぐ性的嗜好を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかしサディズムには、性的嗜好と関連した「性的サディズム」と、性的要素を含まない「非性的サディズム」に分かれます。
非性的サディズムの代表的なものには、「日常的サディズム(everyday sadism)」が挙げられます。
この日常的サディズムとは、他人をからかったり責めたりすることに喜びを感じる性格特性のことであり、「日常生活の中で広く見られる嗜虐性」とも言えます。
例えば、「人をからかって、その人が動揺するのを見るのは面白い」「人の喧嘩を見ると興奮する」「人を支配していることを自覚させるために、からかったことがある」などの項目に強く同意できる人は、日常的サディズムの傾向があります。
そのような人たちは、いじめや誹謗中傷、パワハラなどを行い、惨めな相手を見て喜びを感じてしまうといいます。
サッセンラス氏ら研究チームは、この日常的サディズムの人が、どのようなメカニズムで被害者を叩くようになるのか、いくつかのアンケートから分析することにしました。
日常的サディストは被害者情報を正しく認知できない
研究チームはまず、2653人の参加者を対象にオンラインでアンケートを実施し、日常的サディズムと性的暴行やいじめの被害者を非難することの関連性について調べました。

その結果、サディスティックな快楽と、共感的配慮(他者に同情や配慮を示しやすい傾向)の欠如が、被害者叩きの有意な予測因子だと判明。
しかもこの結果は、異なる文化的背景を持つ人や警察官たちの間でも同じでした。