ベラルーシでは、2021年以降、8人の政治犯が獄中で死亡した。約1,300人の人権活動家、野党関係者、ジャーナリスト、聖職者が刑務所に収監されている。例えば、ベラルーシ人口の10%未満を占めるカトリック教会に対し、繰り返し厳しい弾圧を行っている。2022年秋以降、ミンスクの独立広場にある主要な教会では、カトリック教徒による礼拝が禁止されている。公式の理由はセキュリティ上の欠陥という(カトリック通信=KNAのオリバー・ヒンツ記者)。
また、ベラルーシの独裁者ルカシェンコ大統領は中東の難民(特に、イラク人、アフガニスタン人)を集め、ミンスクに送り込み、ポーランド国境経由でEU諸国に送り込もうとしている、と報じられたことがある。プーチン氏との連携で、大量の難民を欧州に送り込むことで、欧州の政治的混乱を誘発する狙いがあったといわれた。
ちなみに、第32回東京五輪夏季大会にベラルーシから参加した陸上女子のクリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手がルカシェンコ政権への批判とも受け取れる言動をしたとして、ベラルーシ代表団から強制帰国を命令されたことを受け、「帰国すれば生命の危険がある」として政治亡命を決意。同選手は2021年8月、東京羽田空港からウィーン経由でポーランドに亡命する、といった事件が起きた。
ところで、トランプ氏がルカシェンコ大統領と電話会談したというニュースが流れると、ベラルーシの海外亡命活動家たちはトランプ大統領がベラルーシの人権状況の改善を伴わずに、欧州最後の独裁者と目されるルカシェンコ大統領を正当化するのではないかと懸念し出している。
興味深い点は、ベラルーシの国営メディアは、トランプ大統領とルカシェンコ大統領の電話会談を歓迎し、「両首脳は引き続き会談を望んでいる」と伝えていることだ。そして「ベラルーシ大統領はトランプ大統領とその家族をミンスクに招待し、この招待は受け入れられた」と報じている。ただ、トランプ氏の電話会談の直接のテーマ、囚人釈放の件についてはルカシェンコ大統領のウェブサイトでは言及すらされていない。