そして16周目の軌道上、探査機のカメラがふと月の地平線をとらえた瞬間、予期せぬ光景が送られてきました。
白と灰色に揺らめく月面の向こうに、細い三日月の形をした地球が浮かび上がっていたのです。
それがこちら。

NASAによると、これは計画されていた撮影ではなく、いわば偶然の産物でした。
しかし、その一枚は人類が初めて「月から自分たちの惑星を見た」証拠となり、科学史に残る画期的な出来事となりました。
ルナ・オービター1号の任務は当初1年間の予定でしたが、姿勢制御用ガスの不足や機器の劣化が懸念され、後続探査機への電波干渉を避けるため、打ち上げから76日後の1966年10月29日に月の裏側へ意図的に衝突させられています。
最も有名な「アースライズ」の写真
一般的に「月から見た地球」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、1968年12月24日にアポロ8号の宇宙飛行士ビル・アンダースが撮影した「アースライズ(地球の出)」のカラーフォトです。
黒い宇宙空間に青く輝く地球が浮かび上がるその写真は、環境運動にも影響を与え、「かけがえのない地球」という意識を世界に広めました。

しかし科学的な観点から見れば、最初に月から地球をとらえたのは、やはりルナ・オービター1号によるあの白黒のざらついた写真でした。
1966年8月23日、マドリード近郊のロブレド・デ・チャベラ追跡局に送られたその画像は、技術的には「地球の出」の元祖といえるものです。
当時は今のように高性能なCCDカメラもなく、画質は粗く、白黒写真だったため、地球はかすんだ半月のように見えました。
それでも人類が初めて「自分たちの故郷を外から眺める」ことに成功した瞬間は、科学史における大きな一歩だったのです。
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参考文献