鳥居に近づく前に、厳島神社にお参りすることにします。厳島神社の祭神は市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)、田心姫命(たごりひめのみこと)、湍津姫命(たぎつひめのみこと)。宗像三女神と呼ばれ、アマテラスとスサノヲの誓によって生まれた三女神は、道を護る神とされています。

道の代表的なものといえば、航海。593年に海上交通の要衝であった瀬戸内海の中部に航海の安全を願うために建てられたのが始まりとされています。今では航海を始め、交通安全、商売繁盛、芸能上達といったご利益があるとされています。なお、厳島の名も祀られている市杵島(いちきしま)姫命の名が転じてその名がついたとされるのが有力です。

現在のような立派な平安時代の寝殿造りの姿になったのは1168年以降で、当時事実上政権を握っていた平家、特に平清盛が安芸守に任命され、厳島神社を篤く信仰していたことから改築を命じ、貴族の邸宅のような姿に生まれ変わりました。

こちらは社殿から見える鏡池。引き潮のときになるとこのように手鏡のような姿を見ることができます。鏡にあたる部分からは湧水が湧いていて、海に向かって流れていきます。

右学房の向こうに瀬戸内海を望む。

厳島神社の床板は少々隙間が空いています。これは満潮時に受ける水圧の力を逃がすためで、社殿が水圧で破損することがないように工夫されたものです。また、この板は二重構造になっていて、今見ている板は養生板と呼ばれるもの。神社本来の板はこの下に全く同じ形をしたものが並んでいます。本来の板を傷つけないようにするための配慮です。

社殿を巡っていたら寄り一層潮が引いていました。これなら鳥居の下まで行けるかもしれません。鳥居が海の中にあるのは島全体が神の島として崇められていて、島に鳥居を建てるのは畏れ多いから。厳島神社自体海中にあるのも同じ理由です。人が上陸するのも畏れ多いため、先人は舟で来て海の向こうからお参りをしていました。鳥居の内側、つまり島全体が神の領域なのです。