サイコパスは遺伝するのか?
では、こうした冷淡で無感情な特性は、どこから来るのだろうか。ヴィディング教授の研究チームは、双子を対象とした調査を通じて、この特性に強い遺伝的影響があることを突き止めた。遺伝子がほぼ同じ一卵性双生児は、遺伝子が半分異なる二卵性双生児に比べ、両方がこの特性を持つ確率が有意に高かったのだ。
さらに、脳の活動を調べると、感情を処理する「扁桃体(へんとうたい)」という部分の働きが、他の子供と異なることも分かっている。
しかし、ヴィディング教授は強調する。「生まれつきのサイコパスなど存在しない。遺伝子は設計図ではなく、あくまでリスクを高める要因に過ぎない」と。遺伝的な素因があったとしても、それが必ずサイコパスという人格につながるわけではないのだ。
未来を変えるために親ができること
遺伝的要因が強いと聞くと、絶望的に感じるかもしれない。だが、幸いなことに、その後の環境、特に親の関わり方によって、子供が危険な道へ進むのを防ぐことができる。専門家は、3つの重要な介入方法を挙げている。
1.温かく愛情のある子育て
研究によると、たとえ遺伝的なリスクを抱えていても、養子縁組などで愛情深い家庭環境で育った子供は、サイコパス的特性を発症しにくいことが分かっている。親からの「ポジティブな働きかけ」、つまり愛情のこもった関わりが、遺伝的素因に打ち勝つ保護バリアになるのだ。
2.専門家によるセラピー
専門家の助けを借りることは、非常に有効だ。セラピーを通じて、子供は自分の感情や行動をコントロールする方法を学ぶことができる。また、難しい子供への対応に悩む親自身にとっても、大きな支えとなるだろう。
3.早期発見と早期介入
これが最も重要かもしれない。どのような行動であれ、一度根付いてしまうと変えるのは難しくなる。危険なサインにできるだけ早く気づき、適切な対応を始めることが、子供の未来を大きく左右する。

「最初の5年間を逃したらもう手遅れ、ということではない」とヴィディング教授は語る。何歳であっても介入は可能だ。しかし、子供が発する小さなサインを見逃さず、早期に行動を起こすことが、彼らを健やかな未来へと導くための最も確かな道なのである。遺伝子さえも、愛情には敵わないのだ。
参考:Daily Mail Online、ほか
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