見えないビームで電子回路を焼き切る「マイクロ波兵器」の仕組み

 レオニダスは、弾丸やロケットを撃ち出す兵器ではない。それは、ガレージのドアほどの大きさのパネルから、強力なマイクロ波のエネルギービームを照射するシステムだ。この目に見えない波がドローンの内部に浸透し、モーターの制御装置や回路基板といった電子機器を内側から焼き切ってしまう。結果、ドローンは制御不能に陥り、ただの鉄の塊となって落下する。

 この兵器の心臓部には、極度の電圧と熱に耐える「窒化ガリウム」という半導体が使われている。ソフトウェアによってビームの形や方向を瞬時に制御できるため、物理的に砲塔を動かす必要がない。コンピュータの処理速度で、次々とターゲットを切り替えたり、あるいは広範囲を薙ぎ払うように照射したりすることが可能だ。

 そして最大の利点は、弾薬が尽きることがない点だ。電力供給さえあれば、文字通り無限に撃ち続けることができる。一度に約60度の範囲をカバーし、複数のドローンを同時に無力化する「一対多」の能力は、まさにドローンの大群(スウォーム)に対抗するために生まれた技術と言えるだろう。

米軍のマイクロ波兵器『レオニダス』、音も無くドローンの大群を一瞬で無力化するの画像2
(画像=画像は「ZME Science」より)

戦場から都市防衛へ 広がるマイクロ波技術の未来

 米陸軍はこの技術に多額の投資を行っており、すでにレオニダスはフィリピンでの演習を含む、実地評価の段階に入っている。米海軍も、艦船や海兵隊を守るための派生型を開発。ドローンボートのエンジンをマイクロ波で無力化する実験にも成功している。

 Epirus社のローリーCEOは、この技術の用途は戦場だけに留まらないと語る。「このプラットフォームは、スタジアムや港、空港でも必要とされるだろう」

 開発競争はすでに始まっている。中国も「ハリケーン」と名付けた独自の高出力マイクロ波システムを公開済みだ。未来の戦場では、砲弾やミサイルと同じくらい、目に見えないエネルギービームが飛び交うのが当たり前になるかもしれない。

 Epirus社はさらに先を見据えている。戦闘車両やドローン自体に搭載できる小型版、さらには都市のスカイライン全体を覆う巨大な「フォースフィールド」のような防衛システムの構想まであるという。

 ローリーCEOは、自社の使命をギリシャ神話になぞらえてこう語る。「ドローンは、蝋の翼で飛ぶイカロスのようだ。『誰も私に触れることはできない』と空を飛び回っている」。そして、彼は笑顔でこう付け加えた。

「我々は、とてつもなく高性能な“蝋の翼を溶かす機械”を創り出したのさ」

 見えない兵器が飛び交う空が、すぐそこまで来ているのかもしれない。

参考:ZME Science、ほか

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。