無人潜水機が捉えた深海の現状
この静かなる脅威の実態を解明するため、フランス国立科学研究センターが主導する調査チームが動き出した。彼らは調査船から自律型無人潜水機「UlyX」を深海に送り込み、海底のマッピングを開始。最初のミッションで、すでに3355個のドラム缶の位置を特定した。
UlyXが撮影した画像は、我々の想像を絶する光景を捉えていた。原型を留めているものもあれば、無惨に腐食し、変形してしまったドラム缶もある。多くはイソギンチャクなどの海洋生物の住処と化しており、中にはアスファルトと思われる黒い物質が漏れ出しているものも確認された。
調査チームは、水、海底の堆積物、そして魚などの生物サンプルを採取。船上での簡易検査では、放射線量は自然界のレベルに近い値だったというが、これはあくまで速報値だ。今後、数ヶ月かけて行われる精密な分析によって、汚染の深刻度が明らかになる。

(画像=画像は「Daily Mail Online」より)

(画像=画像は「Daily Mail Online」より)
未来への警鐘、見過ごされた汚染
来年に予定されている第2次ミッションでは、より詳細な放射性核種の測定が行われる。さらに、調査は放射性物質だけに留まらない。自然界で分解されず「永遠の化学物質」と呼ばれるPFASなど、他の有害物質の汚染状況も調べられる予定だ。
人類が過去に犯した過ちが、時を経て静かに、しかし確実に私たちに牙をむこうとしているのか。この深海に眠る時限爆弾は、環境問題が世代を超えた長期的な課題であることを、改めて私たちに突きつけている。調査結果のすべてが公表される時、私たちはこの「負の遺産」とどう向き合うべきか、厳しい選択を迫られることになるのかもしれない。
参考:Daily Mail Online、ほか
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。