
(画像=画像は「Daily Mail Online」より)
大西洋の深海、水深4000メートルの暗闇に、人類が捨てた「負の遺産」が眠っている。その数、20万個以上。放射性廃棄物を詰めたドラム缶だ。かつて「安全」と信じられていた海洋投棄が、約50年の時を経て、海洋生態系、そして数百万人の健康を脅かす「放射能の時限爆弾」と化している
今、フランスの科学者チームがその実態調査に乗り出し、衝撃的な現実が明らかになりつつある。
人類が海に捨てた「核のゴミ」
1946年から1990年にかけて、フランスやイギリスを含むヨーロッパの国々は、放射性物質をアスファルトやコンクリートで固め、ドラム缶に封印して海に捨てていた。当時は国際的な管理下でさえ行われていたこの行為は、深海に投棄すれば安全だと考えられていたのだ。
投棄された場所は、フランスの沖合約640キロメートルに広がる深海平原。そこに沈むドラム缶の設計上の寿命は、わずか20年から26年。つまり、とっくの昔に耐久年数を過ぎている。中身の多くは低レベル放射性廃棄物だが、専門家は長期的なリスクを無視できないと警鐘を鳴らす。
食物連鎖を通じて食卓に迫る脅威
最大の懸念は、腐食したドラム缶から漏れ出した放射性物質が海洋生態系に取り込まれることだ。例えば、ストロンチウム90のような放射性核種は、カルシウムと性質が似ているため、魚や甲殻類などの海洋生物の骨や殻に蓄積されやすい。
そして、汚染された生物をより大きな生物が捕食する。この食物連鎖の連鎖を通じて、放射性物質は濃縮されながら上位の捕食者へと移動していく。その終着点の一つが、私たちの食卓だ。汚染された魚介類を人間が摂取すれば、組織の損傷やがんのリスク増加など、深刻な健康被害につながる可能性がある。