高付加価値商品も充実

 ユニクロ・GUや無印良品など強力な競合が存在するなか、しまむらが一貫して売上・利益ともに成長トレンドを維持できている要因は他にもあるという。

「しまむらが総合衣料品店であるという要素も大きいです。衣料品だけではなく、日用品、子ども用品、雑貨、寝具など、とりあえず生活に必要なものは一通り揃っているという業態の店舗=総合衣料品店は、かつては日本全国に多く存在しました。しまむらも以前から、そうした総合衣料品店のひとつで、子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまでを対象に商品を揃え、特定の層をターゲットにするのではなく、すべての層の人が普段使いできるという消費者の日常の生活に対応するお店として役立ってきたお店なんです。それゆえに都心に出店しなくても、地方の小さな町でも店舗の経営が成り立つのです。一店舗あたりの売上が低かったとしても、十分に採算が取れるという構造なんです」(岩崎氏)

 しまむらといえば、追加生産よりも在庫を売り切ることを重視する「売り切り御免」型のスタイルであることが知られているが、商品開発や人材活用の面でも大きな特徴があるという。

「ユニクロや無印良品との違いとしては、自社プライベートブランド(PB)商品のほかに他社からの仕入れ商品も一定割合あるという点です。ユニクロと無印はほぼ100%が自社ブランドの商品ですが、しまむらは仕入れ商品と自社の商品を混在させるかたちで販売しており、割とバラエティーに富んだ品揃えになっています。いわゆる多品種少量販売で、この点も大きな特徴です。

 そして最近の動きで注目すべきが、高付加価値商品の充実です。少し割高な『CLOSSHI(クロッシー)』『CLOSSHI PREMIUM(クロッシープレミアム)』というPBを強化してきており、全体売上の2割を超えてきていますが、汗がすぐに乾きニオイも出にくい点がウリの『FIBER DRY(ファイバードライ)』シリーズなどは非常に好評です。男性向けの『メンズ FIBER DRY さらっとクール2枚組インナー』は2枚入りで1199円(税込)と、しまむらとしては少し高価格帯となっていますが、このようにメンズ、レディース、寝具などあらゆるジャンルで少し価格が高くても売れる高付加価値の商品が増えてきており、そこまで大きく客数が伸びなくても客単価が上がることで、売上が伸びています。

 人材活用に関していうと、パート社員の活用に非常に長けています。かつては全国の店長の9割がパート社員出身で、パートとして働いていた人がそのまま店長になるという制度が今も続いており、現在でも7割ほどに上るようです。なぜ、パートさんでも店長になって店をうまく運営できるのかというと、マニュアルが整備・徹底されているため、効率的に人員配置ができて少数の店員でも回していけるお店づくりができているからです。現場からの改善提案をもとにマニュアルがつくられており、以前私が見たときには約300ページのマニュアルが11冊ありました。これによって、個々の店員の経験に関係なく、全員が同じようなパフォーマンスを発揮できるようになっているんです」(岩崎氏)

 あえて「しまむら」の課題をあげるとすると、どのような点になるのか。

「ユニクロや無印良品と比べると、海外の店舗が圧倒的に少ないです。ベトナムなどアジアの国では、しまむらよりもっと安い商品を揃えた店が多く存在しており、仕入れ商品もあるなかで海外展開を進めていこうとすると、やや厳しいかもしれません。また、全体の売上のうちECの比率がまだ低く、そこまで強くないというのも課題でしょう」(岩崎氏)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、岩崎剛幸/経営コンサルタント、ムガマエ株式会社代表取締役社長)