開発・発売の背景
そもそも、なぜ前髪キープ特化型のマスカラを発売するに至ったのか。その背景には、精緻な消費者ニーズの分析があった。
「当時アホ毛対策として発売していたヘアマスカラの市場はすでに伸びていましたが、生活者は前髪メインで使用していました。競合品があるなかで、どうやってお客様のニーズに合致したケープらしいヘアマスカラを開発できるか考えたときに、前髪キープニーズは特に若年層を中心に高まっており、そのなかでスプレータイプのケープフォーアクティブは前髪をしっかりキープできるということで評価をいただいておりましたので、『前髪特化型』として発売することで、生活者のニーズに対応できると考えました。スプレーだと広範囲にかかる、細かいシースルー前髪だと顔にかかる、などというお悩みも顕在化していたため、細かく調整ができ、しっかりとキープできる前髪に特化したヘアマスカラの開発に至りました」
累計出荷本数は160万本以上となっているが、その推移は花王の想定を大きく上回っているという。
「発売後すぐ話題になり、発売3週目で目標の2倍以上売れました。その後もコンスタントに売れ続けて、発売後1年の出荷数量が、当初計画に比べて1.7倍でした。新製品の販売数の評価は、一時期欠品してしまうほどの売れ行きで、販売店さまや生活者の方にご迷惑をかけてしまった点はありますが、売れ行きについては計画以上で良好とみなしています。マスカラの新商品としては、マスカラ内で最も売れ行きが良く、高評価をいただいています」
愛用者起点の施策がカギ
PRや広告、SNS活用などプロモーション面においては、どのような施策を展開したのか。
「発売直後のテーマは『黒ケープから前髪マスカラ出た!』で、すでに高い認知と多くの愛用者を獲得しているケープ史上最強のキープ力を誇るスプレー『for Activeシリーズ』(愛称:黒ケープ)のイメージを活かしたプロモーションを展開しました。若年への浸透には、SNSで人気のコンテンツを参考にブランド発信の動画と、ケープを愛用してくださっているインフルエンサーさんが実際に使用している様子を動画で投稿いただく施策を組み合わせることで、女子高生の認知・話題喚起と熱量の高い生声による信頼感の醸成を図りました。なかでも、愛用者起点の施策が、商品への興味やエンゲージを高める効果が高く、以後、プロモーションを計画する際にも大切なポイントに位置付けています。
TikTokで公式アカウントを運営しているのも、愛用者起点の取り組みで、SNSで『最適なアイテムの選び方』や『仕上がりをよくする使い方』などの投稿をもとに、アイテム紹介や、推奨しない使い方の発信をすることで、インタラクティブな環境を作り上げようとしています。もともと消費者が疑問に思っていることなので、公式が発信すると安心したり、納得したり、反響も大きいです。さらに、プロモーションにとどまらず、愛用者・ファンの声を商品開発にも活かしています。SNSで、『まつ毛をキープしたいから、まつ毛用のケープがあればいい』という声もあったことから『ケープ フォーアクティブ カールロックマスカラ下地』も発売しました」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)