●この記事のポイント ・CATL(寧徳時代新能源科技)が電池メーカーからEVプラットフォーム供給企業へ進化 ・日本の自動車メーカーが中国市場でのコスト競争力確保のためCATL製プラットフォーム採用 ・電池単体販売から統合システム提供への事業転換で自動車業界の主導権握る戦略
世界最大の車載電池メーカーである中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が、電池の枠を超えてEVプラットフォーム事業に本格参入している。日産自動車やマツダがCATL製EVプラットフォームの採用を決めたほか、ホンダも中国市場でのコスト競争力確保を目的に採用を検討しており、自動車業界の勢力図に大きな変化をもたらしている。
●目次
TDK子会社から独立、8年連続世界シェア首位
CATLの前身は、日本のTDKの中国駐在社員が設立したスタートアップ企業ATLだった。オートインサイト株式会社代表で技術ジャーナリストの鶴原吉郎氏は、同社の成り立ちについて次のように説明する。
「CATLの前身となっているのがATLという会社です。このATLという会社は元々、TDKの中国に駐在していた社員が独立して作ったスタートアップ企業で、その後、TDKの子会社になりました。そこから分離独立して発足したのがCATLで、そこから急速に発達して、もう自動車業界ではかなり有名な会社となり、世界最大の車載電池メーカーになっています」
CATLの設立は2011年と比較的新しいが、その成長スピードは驚異的だ。
「今、車載電池のシェアで言うと2024年に38%になっています。8年連続でシェアトップ、しかも2位がBYDで17%ぐらい、3位が韓国のLG Energy Solutionで11%ぐらいです。日本で1番シェアが高いパナソニックでさえ4%程度とCATLの10分の1くらいの規模しかないのが実態で、CATLは圧倒的な世界トップの車載電池メーカーです」
「電池の使いこなしノウハウが必要」
では、なぜ電池メーカーがプラットフォーム事業に乗り出したのか。鶴原氏は電池技術の特殊性を指摘する。
「電池は結構使いこなすのにノウハウが必要です。例えば電池が充電する時や放電する時は熱が発生するので、それを冷却する必要があります。大体40°C以上に電池がなると劣化が進むと言われているので、それ以下にコントロールしなくてはいけません。同様に、充放電の速度をどのようにコントロールするかも重要です」
電池の性能を最大限に引き出すには、バッテリーマネジメントシステム(BMS)と呼ばれる制御システムが不可欠だ。
「電池の技術そのものも大事ですが、電池の充放電を管理するBMS、バッテリーマネジメントシステムという制御するコンピューターがあります。搭載する電池ごとに、異なるコントロールが必要になります」
スズキが発売予定の「eビターラ」を例に、鶴原氏は統合システムの利点を説明する。
「スズキは電池をBYDの子会社から、セル(単電池)の単位ではなく、電池パックとして購入しています。それはeビターラがスズキにとって初めてのEVであるため、電池の使いこなしのノウハウが不足していたため、冷却システムやBMSなども一体化した電池パックとして購入したほうが安心と判断したようです」