その結果、驚くべき事実が浮かび上がりました。
遺伝子を「失った」からこそ得られた進化
解析の結果、コダマタツは他のタツノオトシゴと比べて、成長や発生に関わる重要な遺伝子の一部を失っていることが判明しました。
特に、頭部の形を決定する「hoxa2b」という遺伝子が機能しなくなっていることが大きなポイントでした。
通常のタツノオトシゴは、成長に伴って顔の口部分が伸び、馬のように長い口先を持つ姿になります。
しかし、コダマタツではこの遺伝子が失われているため、口部の成長が抑えられ、顔が幼いままの丸い形に固定されます。
つまり、彼らは進化の過程で「子どもの顔をしたまま大人になる」という“永遠のベビーフェイス”を選んだのです。
この結果、サンゴのポリプと同じような突起を持ち、捕食者からはほとんど見分けがつかなくなりました。

さらに研究者たちは、ゼブラフィッシュを使ったCRISPR-Cas9実験で、同じ遺伝子を失わせると頭部が短いまま成長することを確認しました。
これにより、遺伝子喪失と形態変化の因果関係が強く裏付けられたのです。
このように、コダマタツは「遺伝子を失うこと」で究極の擬態能力を進化させた生物だったのです。
多くの動物が新しい遺伝子を獲得することで進化してきたのに対し、この小さなタツノオトシゴは逆に遺伝子を削ぎ落とすことで、生存に有利な姿を手に入れました。
研究チームのマイヤー教授は、「遺伝子の喪失が進化的創造性を解放し、サンゴに完全に溶け込むというユニークな生物学的特性を生み出した」と結論づけています。
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参考文献
Why the pygmy seahorse has a snub nose
https://www.uni-konstanz.de/en/university/news-and-media/current-announcements/news-in-detail/why-the-pygmy-seahorse-has-a-snub-nose/