一方で、感情をつかさどる「扁桃体」や、快い匂いを処理する「眼窩前頭皮質(OFC)」には大きな変化は見られませんでした。
この結果は、香りを継続的に嗅ぎ続けることで、脳の中でも特に記憶や情報処理に関わる部位が刺激され続け、構造的な変化につながった可能性を示しています。
研究者らはまた別の解釈も提示しています。
バラの香りを常に感じ続けることで、扁桃体が「もう匂いに注意を向ける必要がない」と活動を抑える一方、後帯状皮質はその匂いに関する記憶や意味づけを処理し続けたため、より活性化したのではないかというのです。
さらに重要なのは、この後帯状皮質がアルツハイマー病患者で萎縮することが知られている部位だという点です。
香りによる持続的な刺激が、この領域を活発に保ち、認知症の予防に役立つ可能性があると研究者たちは期待を寄せています。
もちろん、「脳の容積が増えた=知能が上がる」と単純に結論づけることはできません。
またこの研究は女性のみを対象とし、使用した香りもバラに限定されていました。
こうした点から、今後は男女を含めた大規模な検証や、さまざまな香りを用いた実験が必要とされています。
「香りを嗅ぐだけで脳が大きくなる」という発見は、にわかには信じがたいかもしれません。
しかし日常の中で手軽に取り入れられるアロマが、将来の認知症予防や脳の健康維持に役立つ可能性があるとしたら、これはとても希望の持てる話です。
私たちの脳は、思っている以上に“香り”に敏感で、柔軟に変化できるのかもしれませんね。
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参考文献
Smelling This One Specific Scent Can Boost The Brain’s Gray Matter
https://www.sciencealert.com/smelling-this-one-specific-scent-can-boost-the-brains-gray-matter