
古代マヤの王はロケットを操縦していたのか? エジプトの神は謎の機械に座っていたのか? 世界中の古代遺跡には、まるで空を飛ぶ乗り物に乗っているかのような神々や王の姿が刻まれている。これらは、太古の地球に宇宙人が飛来したことを示す「古代宇宙飛行士説」の証拠なのだろうか。それとも、我々現代人が、神聖な芸術に自らのテクノロジーを投影しているに過ぎないのか。人類最古のミステリーの一つに迫る。
世界中に見られる奇妙な共通点
古代宇宙飛行士説の支持者が指摘するのは、地理的に遠く離れた文明に、驚くほど似通ったモチーフが存在する事実だ。中南米の「羽を持つ蛇」、北欧神話の「世界樹」、天から降臨する神々――。文化は違えど、天から知識をもたらす存在が繰り返し描かれている。これは、古代の人々が同じ「訪問者」を記録したからではないか、というわけだ。
しかし、考古学者や人類学者は、この見方に慎重だ。彼らは、似たようなシンボルが世界各地で独立して生まれることは珍しくないと主張する。天と地、生と死、豊穣といった人類共通の普遍的なテーマを表現しようとすると、自然と蛇(再生や大地)、鳥(天空)、樹木(生命や宇宙の中心)といった象徴にたどり着くというのだ。
有名な「パカル王の石棺」―ロケットか、宇宙樹か
古代宇宙飛行士説の象徴として、あまりにも有名なのがマヤ文明の「パカル王の石棺の蓋」だ。そこに描かれたパカル王の姿は、複雑な計器に囲まれ、レバーを握り、まるで宇宙船を操縦しているかのようだ。この解釈は、多くの書籍やドキュメンタリーで取り上げられ、一世を風靡した。

だが、現代のマヤ美術史の研究では、この解釈は完全に否定されている。この彫刻は、パカル王が死後、マヤの世界観における宇宙樹(世界樹)を昇り、再生する場面を描いたものだと考えられているのだ。王を縁取るのは、死と再生を象徴する蛇。一見すると機械の部品のように見える模様は、天界や神々を示す神聖なシンボルなのである。これは宇宙船の設計図ではなく、王の権威と魂の旅路を描いた、壮大な宗教芸術なのだ。