成果を上げるために踏むべき3ステップ
AIを導入して成果を上げる企業に共通する点は何か。
「AIと聞くと『魔法の杖』のように思われがちですが、まずは現場の方から経営トップの方まで全員が地道に毎日、業務で実際に使うということが重要です。効果には、いくつかのステップがあると我々は考えています。まず社員一人一人が使うところから始まり、次に組織としてどうやって使っていくのか、たとえば業務プロセスで非効率なところをAIを使って効率化する、お客様の満足度を上げるにはどうしたらいいかを検討するというフェーズがあります。それを踏まえて会社全体の業務プロセスをどうするべきかという大きい視点が出てきます。この3ステップにどこまで踏み込めるかで、最終的に効果というのが変わってくるのではないでしょうか。
ここでも、いかに経営トップがコミットメントするのかがカギとなってきます。上場企業の経営層の方々は株式総会などでさまざまな質問を受ける機会があります。その際、事前の準備や対策にAIを使うというユースケースがあり、こうした機会をきっかけに経営層の方々にAIの重要性を認識いただくというのも一つの方法です。企業様の場合、上層部の方がご利用を始められると、現場の方々にも自然と浸透していくケースが多く見られます。
そして実際に導入を進めていくうえでは、重要な点が大きく2つあります。まずセキュリティです。、AIによってデータのアクセシビリティが上がってくるので、情報漏洩やデータアクセスに起因するアクシデントが増える可能性があるため、情報漏洩リスクを十分に理解し、社内ガイドラインを作成すべきです。2点目は、AIをどう使うのかというフェーズの先の、業務プロセスや事業をどうしていくかという点にまで踏み込んでいく際に大きなボトルネックになってくるのが、開発環境です。システム開発・運用をすべて他社にアウトソースしていると、コスト削減などのメリットを享受しにくいので、いかに内製化を進めることができるのかも重要です。」
製造業の事例
具体的な事例として、製造業の生産現場でもAIの導入が進んでいるという。
「ものづくりの会社様ですと、製品を生産するための知見や設計の考え方が社員個人に依存・特化してしまっているケースも珍しくありません。また、社員の高齢化が進んで、そうした知見を後継するにはどうすればよいのかという課題を抱えている企業様も多くいらっしゃいます。そこで、複数のAIエージェントをうまく使ってAIで解決できた例があります。また、大きな組織の中で、『この分野に詳しい人は誰?』『この細かい設計のコツって、どうやって考えたらいいの?』といった疑問が出た際に、全て文書で残っていればいいのですが、情報が分散した状態で存在すると探し出せなかったりします。そこでAIエージェントを使って問題を解決したという例もあります。ものづくりの根幹である開発プロセスを効率化し、製品不良率を低下させることに全社で取り組んで結果を出している企業様もいらっしゃいます。」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)