普段は海底近くにいる彼らが、産卵の時になると、なんとカップルで水面近くまで上がってきます。
さらに驚くのが、その上がり方。オスがメスの口のあたりを軽くくわえて、まるでエスコートするように水面まで引っ張っていくように泳ぐことがあるんだとか。
水面近くに到達すると、2匹は体を巻きつけ合うようにしながら、メスが数万個もの卵を、オスが精子を放出。受精は体の外で行われる体外受精です。
そして産卵が終わると、カップルは別々に海底へと戻っていきます。

いまだ謎多きウツボの世界
ウツボは、なぜわざわざ水面近くで産卵するのか。なぜオスはメスを口でくわえていくのか。実は、ウツボの生態にはまだ解明されていない謎がたくさんあります。
水面で受精・産卵を行うことで、卵や生まれたばかりの稚魚が海流に乗ってより広い範囲へと旅立つことができるのではないかとか、オスがメスをくわえるのは産卵のタイミングを合わせたり受精の確率を上げたりするためではないかとか、さまざまな仮説が立てられています。
そう、ウツボは怖いだけではなく、不思議と驚きに満ちているのです。次に水族館などで見かけたら、その「ギャング」のイメージの奥にある、ユニークな暮らしぶりに想いを馳せてみましょう。
<おっしー/サカナトライター>