最新技術で解き明かす「信号の正体」
「Wow!シグナル」は二度と観測されることなく、謎は深まるばかりだった。しかし最近、「アレシボWow」と名付けられた新しいプロジェクトチームが、現代の信号解析技術を駆使して、ビッグイヤー望遠鏡の未公開データを含む数十年前の記録を再分析。その結果、いくつかの驚くべき事実が明らかになった。
まず、この信号が望遠鏡自体の干渉や、地球由来の電波である可能性は統計的に極めて低いことが判明した。研究チームによれば、「もしこれが地球からのランダムな電波干渉(RFI)だとすると、Wow!シグナルに匹敵する信号を偶然受信するには、約6000年間も観測を続ける必要がある」という。
当時の人工衛星が原因である可能性も低い。ほとんどの衛星は異なる軌道を周回しており、たとえ軌道を外れたソ連の衛星であったとしても、望遠鏡の前を通過するのはほんのコンマ数秒。72秒間も信号を送り続けることは不可能だ。研究チームは「このパターンを再現するには、月よりも遠い軌道にある衛星が必要だ」と付け加えている。
信号は4倍強力だった? 謎を解く新たな仮説
では、その正体は何だったのか。チームはまだ最終的な答えには至っていないが、いくつかの重要な手がかりを発見した。例えば、信号の強度はこれまで考えられていたよりも4倍強力な、250ヤンスキー(電波強度を示す単位)に達していた可能性があるという。
さらに、元の観測チームが残したメモから、1977年と1978年に観測された2つの類似信号(Wow2、Wow3)に注目していたことが分かった。これらの信号は、星間空間に浮かぶ「低温の水素雲」と関連があることが確認された。
これを基に、チームは新たな仮説を提唱している。
「Wow!シグナルは、マグネター(超強力な磁場を持つ中性子星)のフレアのような強烈な放射線源によって、低温の水素雲が刺激され、メーザー(レーザーのマイクロ波版)のような強力な電波を放った『超放射』現象だったのではないか」

これは非常に興味深い可能性だが、チームは宇宙人からのメッセージであるという説も完全には否定していない。「我々の研究は、Wow!シグナルが地球外文明からの信号であるという証拠だと結論付けたわけではない。しかし、今後の探査をより洗練させる上で、こうした結果は不可欠だ」と述べている。
プエルトリコ大学アレシボ校の惑星居住可能性研究所に所属するアベル・メンデス教授は、声明でこう締めくくった。
「この研究は事件を終わらせるものではない。より鮮明な地図を手にして、事件を再捜査するものだ」
40年以上も続く宇宙最大のミステリーの真相解明に向け、新たな一歩が踏み出されたことは間違いない。
参考:IFLScience、ほか
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