●この記事のポイント ・三菱地所レジデンス、マンションの居住者が負担する修繕費を削減する取り組みを始めた ・新築時・修繕工事時において耐久性の高い材料を選定し、大規模修繕工事の周期を12年から18年まで延伸 ・CO2を削減することにより、省エネに貢献できることもメリット

 三菱地所レジデンスは、マンションの大規模修繕工事の周期を延伸することで居住者が負担する修繕費を削減する取り組みを始めた。マンション設計・施工・管理を手掛ける長谷工コーポレーションからの技術提案を採用する。今年1~6月に首都圏で発売された新築マンションの平均価格は前年同期比16.7%増の8958万円、東京23区に限れば1億3064万円と1億円を超えるなど(不動産経済研究所の調査による)、住宅価格の高騰が続くなか、居住者が負担する修繕積立金も上昇傾向にある。建築資材や人件費の上昇による修繕工事費用の上昇が要因とされる。三菱地所レジデンスは新築時・修繕工事時において耐久性の高い材料を選定し、さらに適切な点検・補修を行うことで大規模修繕工事の周期を12年から18年まで延伸させるスキームを構築した。  具体的には、どのような方法で修繕費の大幅な削減を実現するのか。また、このようなスキームは居住者にとってはメリットがあるが、販売事業者であるディベロッパーにとっては、従来の建築工法を見直す必要もあり、手間が増え、耐久性の高い材料の選定などでコストが上昇することも考えられるが、なぜ実施に踏み込むのか。同社への取材をもとに追ってみたい。

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販売事業者側にもメリット

 今回のスキームにより、40年間の修繕積立金総額が4~9%程度軽減され、導入する「ザ・パークハウス 川越フロント」(埼玉県川越市)では9%程度、総額で約2.3億円(将来の物価等の市況を考慮していないシミュレーションに基づく)軽減される見込みだという。効果は費用面だけではない。大規模修繕工事が周期18年と長くなることで、40年間でCO2e(※1)は約225tの削減が可能となるという。 ※1:CO2e 温室効果ガスの排出量を二酸化炭素に換算し表記する単位

 今回、このようなスキームを構築・導入する理由について、三菱地所は次のように説明する。

「近年の物価上昇による工事費高騰を受け、三菱地所レジデンスでは居住者負担を軽減するため、工事費の大きな割合を占める外壁に足場を掛ける仮設工事を伴う大規模修繕工事の周期を40年間で3回から2回に減らす検討を行ってまいりました。近年、10年を超える高耐久材料が揃ってきたことから、当取り組みに至ったものです」

 修繕費が削減されれば、居住者やマンション管理組合にとってはメリットがあるが、三菱地所レジデンスにとっては、どのようなメリットがあるのか。

「三菱地所レジデンスにとっては、まず、ご購入後の入居者の皆様の修繕工事費負担を削減できることにより、お客様に物件をご評価いただけるのではないかと考えています。また、CO2を削減することにより、省エネに貢献できることもメリットだと考えています。大規模修繕工事を周期18年とすることにより、40年間で、CO2eは約225tの削減(スギの木でたとえると、約1万6千本が1年間に吸収する量に相当)が可能となります(One Click LCAによる算定)」(同)

 具体的にどのような方法によって、修繕費を削減するのか。

「新築時および大規模修繕工事時において、外壁に使用する外壁材に耐久性の高い材料を選定すると共に、適切な点検・補修を行うことで、大規模修繕工事の周期を12 年から18 年まで延伸させるスキームを構築し、長期修繕計画に反映しました」(同)