●この記事のポイント ・LIXIL、折り畳んで「しまえる」布製の浴槽を備えた浴室空間「bathtope」がヒット ・従来のプラスチック型の浴槽と比べて約26%の節水を実現、脱炭素など環境負荷低減 ・強度を備えたPET繊維と、防水性があるウレタンフィルムとの複層を素材として用い、約900gの軽い浴槽を実現
LIXIL(リクシル)が昨年11月に発売した、折り畳んで「しまえる」布製の浴槽を備えた浴室空間「bathtope(バストープ)」がヒットしている。「夏場はシャワーだけ」という人は、取り外して「しまって」おけば、浴室を広く使えて浴槽の掃除が不要。浴槽の重さは900グラムで四隅をフックにかけるだけで設置でき、お湯に「つかりたい」ときだけ浴槽を取り付けるという使い方が可能。しかも、1600mmサイズの広い浴槽を実現でき、マンションなどで採用の多い従来の1216サイズのユニットバスと比較して、足を伸ばしてゆったりと入浴できる。200人で入浴テストを実施済であり、ハンモック形状なので首や肩回りを柔らかく受け止めてくれるのに加え、柔らかい繊維と防水フィルムの二重構造を持つ一枚の布「fabric bath」から作られており、柔らかく肌触りの良い生地が頭や背中を優しく包み込んでくれる。従来のプラスチック型の浴槽と比べて約26%の節水を実現できるため、脱炭素など環境負荷低減にもつながる。発売直後に見積件数は目標の5倍にも上ったとのことだが、浴槽付きでもなく、シャワールームでもない、新たなジャンルを切り開いた「バストープ」は、どのように生まれたのか。ヒット商品誕生のカギについて、LIXILへの取材をもとに追ってみたい。
●目次
従来のユニットバスはリサイクルが困難
「お風呂はもっと、自由でいい。」をコンセプトとして誕生した「バストープ」。たたんで収納できるリムーバブルな浴槽を備えた浴室空間という点が独創的だが、これまで存在しなかったタイプのユニットバスを開発・発売するに至った背景について、リクシルは次のようにいう。
「日本の入浴文化の未来を常に考えています。そのなかで日本の住宅に普及したユニットバスの今後の変化を深く考えています。従来のユニットバスはリサイクルが難しく、湯貯めや保温の際に多くの二酸化炭素(CO2)も発生します。今後シャワー浴が主流になったら、環境にも配慮しつつ、ユニットバスをどのように変化させればいいのだろうと考えました。また日本人にとって、疲れているときにお湯に浸かり、身体を癒すという習慣は切り離せないもの。近年の多様化するライフスタイルと、日本の入浴文化を両立できる空間を提供できないかと考え、取り外しできる浴槽というアイディアをストックしていました。タイミングよく社内のビジネスアイディアコンテストが始まり、応募し最優秀賞を獲得したことから、実用化に向けたプロジェクトが始まりました」
商品の特徴などは前述のとおりだが、リクシルによれば購入者は以下のようなメリットが得られるという。 ・シャワー浴と浴槽浴を自在に切り替え ・身体を包み込む、新感覚の柔らかい浴槽 ・コンパクトな空間でも、足を伸ばして入浴可能 ・浴室に隣接する洗面室も広々活用 ・環境にも配慮、26%の節水を実現