入院率78%、致死率4.2%の恐怖

 米国疾病予防管理センター(CDC)のデータによれば、サルモネラ菌はアメリカで毎年約120万人の病気を引き起こしている。中でもサルモネラ・ダブリンによる感染は、血流感染症を引き起こす傾向があるため、特に重篤だ。

 2005年から2013年の間に、サルモネラ・ダブリン感染者のうち、実に78%が入院を必要とし、4.2%が死亡したという驚異的なデータも存在する。2019年には、カリフォルニア州で汚染された牛ひき肉が原因で13人が感染し、1人が死亡する大規模な集団感染も発生している。

 かつては治療可能だった感染症が、抗生物質の効かない「不治の病」へと変貌しつつある。CDCによれば、薬剤耐性菌による感染は、アメリカですでに年間280万人以上の病気と3万5000人以上の死を引き起こしているという。

治療法なきスーパーバグの脅威 ― 牛から人へ広がる“静かなるパンデミック”の画像3
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI))

求められる「ワンヘルス」のアプローチ

 この静かなる脅威に対抗するため、研究者たちは「ワンヘルス」というアプローチの必要性を強調する。これは、人間の健康、動物の健康、そして環境の健康を一体のものとして捉え、連携して対策を講じるという考え方だ。家畜への抗生物質の使用を減らし、農場から食卓までの衛生管理を徹底するなど、社会全体での取り組みが急務となっている。

 私たちの食生活を支える畜産業の裏で着実に広がるスーパーバグの脅威。その蔓延を食い止められるかどうかは、我々一人ひとりの意識にかかっているのかもしれない。

参考:Daily Mail Online、ほか

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