火星の植民地計画が進む中、コロニーの建設費と材料をいかに調達するかが大きな問題となっています。

レンガ1個を火星に送るのに約200万ドルかかると見積もられており、宇宙飛行士とともに材料を送るのは不可能です。

しかし英マンチェスター大学(University of Manchester)の研究チームは2021年に、これらの問題を克服しうる新技術の開発に成功しました。

それは現地で調達できるレゴリス(岩石の堆積層)に、宇宙飛行士から排出される血と汗と涙と加えて、コンクリートを作る技術です。

実験では、通常のコンクリートより強度の高い材料の生成に成功したとのこと。

研究の詳細は2021年9月10日付けで学術誌『Materials Today Bio』に掲載されています。

 

目次

  • 血中タンパク質とレゴリスで「コンクリート」が作れる
  • 「尿素」を加えることで、強度が300%上昇

血中タンパク質とレゴリスで「コンクリート」が作れる

月面や火星でのコロニー建設には、地球からの材料調達が難しいため、現地で入手できる資源を有効活用しなければなりません。

こうした「あり合わせの資源」を使う技術を「in-situ resource utilization(ISRU)」と呼びます。

基本的には、月面や火星上で採取できるレゴリスや岩石、および水の堆積物が中心となります。

しかし、見落とされている重要な資源があります。

それが、宇宙飛行士です。

もっと具体的に言えば、宇宙飛行士が現地で排出する血と汗と涙、そして尿です。

研究チームは、人の血液中に存在するタンパク質の「ヒト血清アルブミン(HSA)」が、模擬ダスト(月や火星で採取できるレゴリスに近いもの)を結合して固めるバインダーとして機能することを発見しました。

HSAは、献血と同じ手順で、宇宙飛行士から安全に抽出できます。血漿中に最も多く含まれるタンパク質でもあり、1日あたり12〜25gの割合で補充されます。