イストイオラキス・マッカーサレイは、体高がおよそ人間の大人以上で、体重は1トン前後に達したと推定されています。

背椎の神経棘は通常の4倍以上に伸びており、背中に大きな帆のような構造が形成されていたと考えられます。

帆の役割は何だったのか?

恐竜や古代生物の中には、スピノサウルスやディメトロドンのように「背中の帆」を持つものが知られています。

しかし、その役割については長年議論が続いてきました。

従来は「体温調節装置」や「脂肪貯蔵庫」といった実用的な説が唱えられてきましたが、今回の研究ではその可能性は低いとされました。

なぜなら、血管が集中する帆は攻撃を受ければ致命的な出血を招き、捕食者にとって格好の標的になってしまうからです。

代わりに有力視されているのが、性的選択や種内シグナルとしての役割です。

つまり、クジャクのオスが大きな尾羽を誇示するように、イストイオラキスの帆も仲間や繁殖相手に自分を示すための「視覚的なアピール」だった可能性があります。

群れで行動するイグアノドン類において、帆は仲間同士の識別や捕食者への威嚇としても機能したかもしれません。

さらにチームは、イグアノドン類の進化史を系統解析によって再検討しました。

その結果、神経棘の伸長はジュラ紀後期に始まり、白亜紀前期には広く定着していたことが示されました。

つまり、背中の帆は一部の恐竜だけの特殊な形質ではなく、当時の環境や社会的行動に深く関わる重要な特徴だったのです。

イストイオラキス・マッカーサレイの発見は、恐竜が単なる巨大な爬虫類ではなく、仲間や異性との関わりの中で多様な姿へと進化していったことを物語っています。

「進化は時に実用性よりも派手さを選ぶ」と研究者は述べています。

クジャクの尾やシカの角と同じように、恐竜もまた自分を誇示するために大胆な形態を手に入れていたのかもしれません。

今後さらに化石が見つかれば、背中の帆がどのように使われていたのか、より明確にわかるでしょう。