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「声が通らない」「滑舌が悪い」「聞き返される」「早口になる」「説得力がない」——これらは、ビジネスパーソンが抱える声の悩みトップ5だ。驚くことに、社会人の約9割が何らかの声の悩みを抱えているという調査結果がある。
「一瞬で相手を引き込む奇跡の声トレ」(秋竹朋子著)Gakken
赤ちゃんに学ぶ理想の発声法
興味深い事実がある。生まれたばかりの赤ちゃんは、誰に教わることもなく完璧な発声をしている。小さな体から驚くほど大きな声が出て、何時間泣いても喉を痛めない。これは、赤ちゃんが腹式呼吸による理想的な発声をしているからだ。
実は、私たちは皆、正しい発声法を本能的に知って生まれてくる。問題は成長の過程で身についた悪い癖だ。ストレス、緊張、浅い呼吸、悪い姿勢——これらが本来の発声を妨げている。
声帯の専門医によると、日本人の約7割が「喉声」で話しているという。喉に力を入れて無理に声を出すため、声帯に負担がかかり、聞き取りにくい声になってしまう。長時間話すと喉が痛くなる人は、典型的な喉声の可能性が高い。
声の改善には、医学的にも証明された効果的な方法がある。まず基本となるのが腹式呼吸の習得だ。仰向けになり、お腹に手を当てて、吸うときに膨らみ、吐くときに凹むのを確認する。この呼吸法をマスターするだけで、声量は平均30%増加するという研究結果がある。
次に重要なのが表情筋のトレーニングだ。顔には約30種類の筋肉があり、これらが声の響きに大きく影響する。特に口角を上げて話すことで、声が明るくなり、相手に好印象を与える。実際、コールセンターでは「笑顔で電話に出る」訓練を行い、顧客満足度を20%向上させた事例もある。
姿勢の改善も欠かせない。猫背では肺が圧迫され、十分な空気を取り込めない。背筋を伸ばし、肩の力を抜くだけで、声の通りは格段に良くなる。