
米国CIA本部の敷地内に、30年以上も世界中の天才たちの頭脳を悩ませ続けてきた、一つの彫刻がある。その名は「クリプトス」。1700以上の文字が刻まれたこの芸術作品には、4つの暗号メッセージが隠されている。これまでに3つは解読されたが、最後の1つ、通称「K4」は、いまだ誰にも解かれていない。
しかし、その謎解きゲームに、ついに終止符が打たれるかもしれない。作者である芸術家ジム・サンボーン氏が、今年11月の自身の80歳の誕生日を機に、この最後の暗号の「完全な答え」をオークションに出品すると発表したのだ。
30年間、天才たちを魅了し、狂わせた謎
1990年に設置されて以来、「クリプトス」は、世界中の暗号解読マニアや研究者たちの挑戦心を掻き立ててきた。その人気は絶大で、人気作家ダン・ブラウンの小説『ダ・ヴィンチ・コード』にも登場し、『ロスト・シンボル』では一つの章が割かれるほどだ。
しかし、その熱狂は時に常軌を逸した。サンボーン氏によれば、この暗号は「結婚生活を破壊し」、解読に挫折した人々が予告なしに彼の自宅に押しかけ、さらには殺害予告まで引き起こしたという。
「35年間、私はこの暗号を公にアクセス可能な状態に保つという、個人的な使命に従ってきました。しかし、文字通り何万通ものメールや手紙に対応するための労力は、もはや耐え難いものになりました」とサンボーン氏は公開書簡で語る。「クリプトスは私の数あるプロジェクトの一つに過ぎませんが、今や時間を食う厄介な存在となってしまったのです」
30年以上も背負い続けてきたこの重荷から、ついに解放されることを決意したのだ。
解読された3つのメッセージと、残された謎
「クリプトス」の制作にあたり、サンボーン氏は元CIA暗号センターの責任者、エドワード・シャイト氏の協力を得ている。これまでに解読された3つのメッセージは、謎めいており、示唆に富んでいる。
** 第1のメッセージ: 「微妙な陰影と光の欠如の間に、iqlusionのニュアンスがある」 ** (※”illusion”が意図的に誤って綴られている)
** 第2のメッセージ: 「ラングレー(CIA本部)はこれを知っているか?知っているはずだ。どこかあそこに埋められている。X 正確な場所を知っているのは誰か? WWのみ」 ** (※WWは当時のCIA長官ウィリアム・ウェブスターのイニシャル)
** 第3のメッセージ: ツタンカーメン王の墓を開けた際のハワード・カーターの日記を改変した一節。「ゆっくりと、絶望的なほどゆっくりと…」 **
そして、残された最後の暗号「K4」。その答えは、今年11月のオークションで、推定50万ドル(約7500万円)で落札される可能性がある。
