●この記事のポイント ・大改装をへて2019年に新装オープンした渋谷PARCO、取扱高は過去最高を更新 ・全取扱高に占めるインバウンド分の比率は4割に ・従来パルコが一番の強みにしていた価値に原点回帰し、そこに立脚した店作り

 大改装をへて2019年に新装オープンした渋谷PARCO(パルコ)が好調だ。25年2月期の取扱高は前期比22.5%増の439億円と過去最高を更新。注目すべきは高いインバウンド集客力だ。全取扱高に占めるインバウンド分の比率は4割に達するという。改装後6年をへて、いまだに渋谷パルコが国内・海外の客を引き寄せる秘密について、専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

本来のパルコの文化に戻った

 渋谷パルコの売上高が伸びている理由は何か。経営コンサルタントでムガマエ株式会社代表の岩崎剛幸氏は次のように分析する。

「従来パルコが一番の強みにしていた価値に原点回帰し、そこに立脚した店作りをきちんとやり始めたという点が大きいのではないでしょうか。パルコという商業施設は、もともと“ちょっと変わった、他ではあんまり見たことがないような、売れるかどうかもよくわからないようなモノでも、積極的に扱う”という特徴を持っていました。ですから百貨店とは少し違い、いわゆるファッションビルの先駆け的な存在として、最先端のファッションを提案したり、通常では大型の商業施設には入れないようなテナントを入れたりということで、個性を出していました。ですが、こうした“新しいものをどんどん生み出していく”という文化が徐々に薄れて、平均的な施設になり“以前はもっとチャレンジングだったのに”“最近は普通だよね”というイメージが広がっていたなか、渋谷パルコの大改装で原点に戻ったという印象を受けます。ですので、建物の建て替えが成功したというよりは、本来のパルコの文化に戻ったことが、成功につながっているということではないでしょうか」(岩崎氏)

 それは、具体的に店舗内のあらゆるところに表れているという。

「まず、地下のレストラン街ですが、『CHAOS KITCHEN(カオスキッチン)』というその名のとおり、あまり見たことがないようなお店ばかりで構成されており、本当に混沌としています(笑)。和食なのか中華なのかアジアなのかヨーロピアンなのかよくわからない、いろんなものが入り混じった飲食街となっています。1階は一般的な百貨店同様にラグジュアリー系ブランドのフロアですが、フロア名は『SHŌTENGAI-EDIT-TOKYO』。フロアコンセプトは「商店街」です。通常だとそのようなコンセプトであればラグジュアリーブランドは出店しないものですが、“今回の渋谷パルコのコンセプトであれば出てもいい”という判断で出店しているのでしょう。

 フロア構成の特徴としては、通常の百貨店は食品、婦人服、高級ブランド、紳士服、子供服、家具とジャンル別のフロア構成となりますが、渋谷パルコは2階はモード&アート、3階はアドバンスド・コンテンポラリーなどとテーマ別に分類されており、さまざまなジャンルの店舗をミックスしてお客に提案することで、逆に好まれるというか、“なんかよくわかんないけど、面白いね”というイメージを抱かせることに成功しています。このテーマ別のフロア構成が、パルコの面白さを表現しています。“ジャンルレス”“ジャンルミックス”で、バラエティに富む要素を組み合わせていくということにチャレンジしている点は、パルコらしいところだと思います」(岩崎氏)