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「プレゼンの内容は完璧なのに、なぜか響かない」「会議で発言してもスルーされる」——こうした悩みの原因は、実は「声」にあるかもしれない。

私たちは学校で読み書きは習っても、「話す技術」について体系的に学ぶ機会はほとんどない。しかし、ビジネスの現場では、声こそが成功を左右する重要な要素となっている。

「一瞬で相手を引き込む奇跡の声トレ」(秋竹朋子著)Gakken

近年、声トレが注目を集め、NHKや民放各局でも声の重要性が特集されるようになった。なぜ今、「声」が注目されているのだろうか。

エグゼクティブが密かに通うボイストレーニング

意外に思われるかもしれないが、多くの経営者や政治家はボイストレーニングを受けている。彼らは既に成功を収めた人物だが、なぜ今さら声を鍛えるのか。

答えは明確だ。デジタル化が進む現代だからこそ、重要な局面では対面でのコミュニケーションの価値が高まっている。オンライン会議が当たり前になった今、画面越しでも存在感を発揮できる声の重要性は以前にも増して高まっているのだ。

「声総研」が20代から50代のビジネスパーソンを対象に実施した調査結果は、多くの人に衝撃を与えた。調査によると、「声に自信がある」と答えた人の管理職昇進率は、そうでない人の1.5倍。さらに年収上位層の約7割が「声を褒められた経験がある」と回答し、その8割以上が「声が仕事で有利に働いた」と実感している。

また、人事評価の場面でも声の影響は大きい。ある大手企業の人事部長は「同じ内容を話していても、声の印象で評価が変わることは確実にある」と証言する。第一印象の38%は声で決まるという心理学の研究結果もあり、声がキャリア形成に与える影響は想像以上に大きい。

声が引き起こす「見えない機会損失」

声の問題は、目に見えない形でキャリアにブレーキをかけ続ける。電話での聞き返し、プレゼンでの集中力低下、初対面での悪印象——これらは氷山の一角に過ぎない。