たとえば、パナソニックコネクト株式会社である。同社は、内閣官房の「ジョブ型人事指針※2)」にて、自社のジョブ型を以下のように説明している(一部抜粋)※3)。
仕事で成果を上げるほど報酬を上げ、「仕事・成果を軸」として個人単位で処遇する 通常の成長支援では不十分と判断される社員に対しては、「パフォーマンス改善プログラム」が実施される パフォーマンス改善プログラムを通じても成果の発揮が見られない場合は、同一等級の報酬レンジ内での「降給やダウングレード」が実施される
成果。成果。成果。
成果が出なければ降給・降格。
「パフォーマンス改善プログラム」も、なにやら恐ろしげ……いや、実際に恐ろしい。かつてマクドナルドやブルームバーグなどがリストラ策として活用したこともあるからだ。
新入社員時代から厳しい企業もある。富士通だ。富士通は、2026年4月入社者から、一律の初任給を廃止し、入社時からジョブや職責の高さに応じた処遇を適用することを決定している。高度な専門性を持つ新入社員には、入社時から40万円を超える基本給を支払う可能性がある、という。
だが、多くの新入社員は、専門性も実力も経験もない。いわば「弱者」だ。弱者だからこそ仕事を教わりたい。以下の回答にその思いが表れている。
“自分の能力で仕事をやっていけるか不安:71.3%(過去最高 産能調査)” “仕事のやり方や手順を細かく教えて欲しい:66.7%(産能調査)”
ところが、成果主義はそれを許さない。「後輩育成」は成果として評価されづらい。将来のライバルを育てることにもつながる。そんな「後輩育成」をしてくれる優しい先輩が成果主義企業にどれだけいることか。
彼ら(彼女ら)は、直感的にそのことをわかっている。だからこそ、成果主義を敬遠し、時間をかけて育ててくれそうな年功序列を望む。甘いのではない。ナイーブなのでもない。不安なのだ。人手不足が叫ばれる昨今、彼らの不安を解消する制度設計が、彼らが「長く働きたい」と思える制度設計が、企業側に求められているのかもしれない。