・「サイゼリヤ」が、1店舗限定で朝食セットメニュー「朝サイゼ」を提供していることが話題を呼んでいる ・手間がかからずオペレーションも軽いメニュー構成のため、全体でみると人手不足と人件費高騰の影響を和らげられる ・セットメニュー化して単品メニューより高い価格を設定することで、利幅を確保しやすいという面も
イタリアンチェーン「サイゼリヤ」が、1店舗限定で朝食セットメニュー「朝サイゼ」を提供していることが話題を呼んでいる。店舗は東京都・江東区の「大島ピーコックストア前店」で提供時間は午前7時〜10時。サイゼリヤの業績は好調だ。2024年9月~25年5月期連結決算は、売上高が前年同期比15%増の1883億円、純利益は同50%増の77億円と好調で、店舗は『常に混雑している』というイメージも強く、集客に困っている様子はみえない。にもかかわらず、なぜサイゼリヤは、さらなる集客策ともいえる「朝サイゼ」を発売したのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
●目次
幅広い層の方が働ける環境をつくる
国内に1038店舗、海外に531店舗(2024年8月期)を展開するサイゼリヤといえば、リーズナブルな価格でクオリティの高い料理を楽しめ、多くのファンを持つことで知られる。200円の「柔らか青豆の温サラダ」、300円の「辛味チキン」「ミラノ風ドリア」「ポップコーンシュリンプ」、400円の「ミートソースボロニア風」などお手頃な価格で味わえる人気メニューを抱えている。
前述のとおり国内既存店の売上は好調であり、常に混雑しているイメージも強く集客に困っている様子はみえないが、さらなる集客力強化策とみられる朝食メニューを始めた理由は、何であると考えられるのか。店舗で実食し「コスパ的に非常に優れている」と評価するフードアナリストの重盛高雄氏はいう。
「従来の低価格路線を打ち破って、新しいお客さんに来ていただくための試行錯誤をしているのではないでしょうか。基本的にサイゼリヤは7~9時台という朝早い時間帯は営業していませんが、その時間帯も営業して通常のメニューとはがらっと変わったメニューを展開して、これまでと違った客層を呼び込もうとしているようにみえます。実際に私が店内で観察した限りでは、ご高齢の方が朝メニューを注文している傾向がみられました。一方、若年層は『ミルクジェラート』やドリンクバーに好みの単品メニューを組み合わせて注文するお客さんが多いようでした。
また、朝のみのオリジナルメニューは『焼きシナモンフォッカチオ』と、『パンチェッタとチーズのパニーニ』の2種類であり、店舗側としては手間がかからずオペレーションも軽いため、手間がかかるメニューではなく朝メニューを選ぶ人が増えれば、全体でみると人手不足と人件費高騰の影響を和らげられるというメリットもあるでしょう。サイゼリヤの店舗の従業員には若い方以外の方も多く見受けられますが、特に人材の奪い合いが進行している外食業界では、年齢・国籍・性別問わず幅広い層の方が働ける環境をつくるということが重要になってきます。
セットで選ぶことができるポテトとドリンクバーは日常的にサイゼリヤで提供されているものなので、それに『焼きシナモンフォッカチオ』か『パンチェッタとチーズのパニーニ』を追加すれば済みます。セットメニュー化して単品メニューより高い価格を設定することで、利幅を確保しやすいという面もあるでしょう。特にサイゼリヤは『値上げをしない』と宣言しているため、その点は重要な要素かもしれません」
